第179国会 2011(H.23)年10月28日「消費者問題に関する特別委員会」
Q1 放射能問題におけるリスクコミュニケーションについて
▼大河原:
消費者担当大臣の役目として国民の期待するところは、食べ物の安全を、消費者目線、生活者目線でしっかりと守ってほしいということだと思います。大臣は所信で、暫定規制値を超えた放射性物質が食品から検出される事態に対して、消費者の皆様に食品のモニタリング調査の結果を分かりやすく伝え、そして不安を取り除くことが重要だと表明されました。
消費者庁は、5、6月に意識調査をされ、7月にその報告書も出ております。消費者庁としてリスクコミュニケーションに特化したご答弁をいただきたいと思います。どのようなスタンスでこれを実現しようとされているのでしょうか。
△山岡賢次大臣:
放射能の問題は、当然ですけれども、実態よりもはるかに国民の皆様はナイーブになっておられるわけで、それはなぜかというと、十分な知識を得るチャンスがないというところにも大きな、大きなというか、ある意味じゃほとんどの原因かもしれないわけでございます。そういう点で、私どもとしては、八月に神奈川、埼玉などで意見交換会を行った際の専門家による分析をいたしまして、必要な情報は何かということと、消費者が理解しにくいと、この辺をよくもう一度把握をして対策を立てなければいけないと、こういう結論になっております。
それで、そういうことで、消費者庁では当日の参加者の質疑、大体皆さん共通の疑問ですから、回答、また専門家の資料、こういうものを今ホームページにまず第一に記載をして情報の提供をしていっているところでございますが、それだけではなくて、地方自治体や消費者団体と連携をいたしましてリスクコミュニケーションを全国展開していくと。それも、流すだけじゃなくて、直接対話も含めたリスクコミュニケーションを全国展開して、消費者が食品と放射能に関する情報を十分得て自らの判断で行動していただけるように全力を挙げて努力をしてまいりたいと思っております。
Q2 消費者にわかりやすい食品表示の一元化について
▼大河原:
私は、食の安全、消費者運動を長く続けてきまして、チェルノブイリの原発事故の後、原発事故が一度起こってしまったら今までの努力は水の泡という無力感というものも味わいました。
今、政府挙げてあらゆる検査に対応しようという体制をつくり、この値(放射能の測定値)の意味を消費者に伝えることが必要だと思います。例えばホウレンソウを1キロ食べ続けてどうなるかというようなお話ばかりが目に付いて、わかりにくいです。
先日、NHKの朝の番組で、小さなお子さんを持つご家庭を対象に、選んで食べている方と、今までどおり普通に物を購入している方に、1食分余分に作っていただいて(放射能を)測ることを各地で行い、被災地、広島、北海道の方々の1食丸ごとの食卓調査をされていました。
消費者にわかりやすくと考えれば、例えば学校給食などでも1食丸ごとを測ってそれを公表するといったことも、消費者庁ならではの、生活者ならではの視点を生かした調査として、これから必要になると思いますので、提案しておきたいと思います。
消費者目線で食品を選ぶことにおいても、頼りになるのはやはり表示です。今、消費者庁に食品表示一元化検討会が設置され議論が進んでいるところです。食品表示、JAS法、食品衛生法、健康増進法を一元化して管理し、消費者が求める分かりやすい表示にすることが非常に重要です。
食品表示の一元化についての消費者庁の基本的な立場、そして消費者の知る権利、選ぶ権利に資するあり方について、ぜひ大臣からご答弁いただければと思います。
△山岡賢次大臣:
まさに委員の御指摘のとおりでございまして、私が答えるまでもなく御質問のとおりだと思いますが、我々としては、JAS法とか食品衛生法、健康増進法等々、そういうものを、今、食品の表示一元化検討会というのを開いているところでございます。そして、平成24年度、つまりちょっと遅れますけれども25年の国会、本当はもっと早い方がいいのかもしれませんが、今急に取り上げているわけで拙速というのもちょっと、これは重要な問題ですから、25年の国会で法案を提出をしてその実現を図っていくと、こういうことで進めていっております。
Q3 食品表示一元化検討会中間まとめ前の消費者意見の聞き取りについて
▼大河原:
日本の食品は質が良い、また安全性も確保されているということで、原発事故が起こるまでは世界に打って出る、そういう意味でも成長産業と位置付けられるとも言われておりました。
一方で、自給率が低いわけですから外国のものがたくさん入ってきているという現実もあり、純食料輸入国のお隣の韓国とはWTOのG10として立場が同じです。しかし、表示を見てみますと、韓国の表示は非常に分かりやすくなっており、日本よりもある意味では進んでいる表示と私は認識しております。この検討会の中に提出された資料にも、韓国や国際ルールとしてEU、アメリカ、そうした事例が示されておりました。どういう評価をされているのか。また、海外旅行も盛んですので日本の消費者は(他国の例を)よく知っております。日本で売られている同じ商品が、他の国では別のことまでちゃんとわかるようになっている、こういう現実があるわけです。
今(平成)25年度に向けてというお話で、表示一元化の検討の中間まとめが出るわけですが、この中間まとめを出す際には、パブリックコメントを取る前に消費者の意見をしっかりと聞いてたたき台をつくっていただきたいと思います。中間まとめの前に消費者の意見を直接聞いて、そして更に進んだ、消費者の声を取り入れた一元化が実現できるようにご努力いただけないでしょうか、どうでしょう。
△山岡賢次大臣:
今委員のおっしゃったとおりでございまして、そこで今年度は韓国を含む主要な諸外国、今委員からも御指摘ありましたが、米国、EU、イギリス、スウェーデン、オーストリア、スイス、中国、韓国、8か国で調査をしておりまして、調査の結果も踏まえて食品表示の在り方についてこれを検討していくという前提で今調査をしているわけでございます。
そういう多様な消費者団体、消費者の御意見もありますので、食品表示一元化検討会にはそういう皆さんもメンバーに入っていただくとか、あるいはパブリックコメントでございますけれども、その過程で消費者等との意見交換会、直接の意見交換会というのも積極的に行って、本当に委員の御指摘のことが実際に行われるように努力をしてまいります。
Q4 食品表示一元化検討会中間まとめ前の消費者意見の聞き取りについて
▼大河原:
食の安心、安全をしっかりと確保していくために表示は大事ですが、実は大変な危機が今訪れておりまして、食品の安心、安全を踏みにじるTPP(への参加)は、日本の努力を無にするものだと勉強を重ねてわかってきました。
このTPPの交渉に際して政府が情報収集をし、先日政府が説明された中に、TPP交渉の分野別の状況と問題点というペーパーがあり、その中に、貿易の技術的障壁(TBT)の項目において、遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国に問題が生ずるおそれがあると記されています。表示ルールで、日本よりも緩い基準が提起される可能性があることを政府が認めたものです。
遺伝子組換えについては、日本では安全審査の承認はされていますが、商用栽培はされていません。日本では、みそ、しょうゆ、豆腐など、大豆を使った食品が多く、遺伝子組換え作物が5%未満ならば表示しなくていいことに消費者として不満はありますが、食品表示検討会の中に示された資料のアンケートの中にも、組換え食品であるかどうかを食品選びのときに見るという方々が62.9%いらっしゃいました。アメリカのように遺伝子組換えの表示がない国に対し、全ての関税をゼロにする、非関税障壁をなくすというTPPへの参加は日本の安心、安全を踏みにじり、表示に対して、日本が続けている努力に対して非常に大きな障害となるわけです。
消費者庁として、そして政治家として、TPPの問題についてスタンスをお示しいただきたいと思います。
△山岡賢次大臣:
今政治家としてというお言葉もありましたけれども、一応は消費者担当大臣としてお答え申し上げますと、ここでTPPについてどうかということを論じさせていただく立場ではないと心得ておりますが、そういう場合には、御指摘の危惧とかあるいは対応が要るという認識は持っております。
私も、前はBSE対策本部長をずっとやって、アメリカに行ってジョハンズという農水というか農務大臣とも本当に机の上に二人で上がってつかみ合いになるぐらいの大論争をやってきたわけでございますけれども、アメリカ人が食べられるものがなぜ日本人が食べられないんだと、そういう論理であったわけでございます、まあそれぞれの国の基準というのは違いますから。
そこで、やはり日本は日本で、どういうことになろうと、食品の表示、そういうものをできるだけしっかりとさせていってと。全部といっても物理的に難しい面も委員ご案内のとおりあるわけですが、そしてその判断は、別な意味で、そういうことが認可されて、許可されて流入してくるというのは別次元の話ですが、そういうことがあったとしても、消費者自身がしっかりと選別、選択をしていけるような、そういうものにしていくように最善の努力を払ってまいりたいと思います。
▼大河原:
大臣のご認識、もう少し進めていただきたいです。表示を奪われてしまうんです。知る権利と選ぶ権利を奪われることになります。政府にとってはこの政策を侵されることになります。
ぜひご認識を改めていただきたいとお願いをして、質問を終わります。