〈平成21年度決算についての内閣に対する警告決議案〉
内閣に対し、次のとおり警告する。
内閣は、適切な措置を講じ、その結果を本院に報告すべきである。
1 平成21年度決算検査報告において、不当事項等の指摘件数が979件に上るとともに、指摘金額が1兆7904億円と3年連続で過去最悪を更新し、初めて1兆円を超える事態になったことは、遺憾である。
政府は、我が国の財政が極めて深刻な状況にあることを強く認識し、不適正な公費支出の防止と是正に努め、予算執行の適正化に向けて一層尽力するとともに、利用見込みの少ない資産や余剰資金の有効活用を図るなどして、予算の無駄を徹底して排除し、予算の効率的使用に努めるべきである。
2 東京電力株式会社福島第一原子力発電所において、本年3月、東北地方太平洋沖地震による激しい揺れと大規模な津波の襲来に際し、既存の安全対策が有効に機能せず、原子炉等の冷却機能の喪失、格納容器の損壊、放射性物質の大量放出という極めて深刻な事態が発生した結果、多くの住民に避難を余儀なくさせ、農林漁業を始めとする事業者に甚大な被害をもたらし、国民に対し健康不安を与え、現在もなお、このような事態が継続していることは、極めて遺憾である。
政府は、関係者一丸となって事態の早急な収束に向けて全力を傾注し、被害者の救済に万全を期するとともに、原子力安全に対する国民の信頼を大きく損ねたことを厳粛かつ深刻に受け止め、事故原因の究明を徹底し、原子力施設の安全対策を根底から見直すべきである。
3 中央防災無線網整備事業に関する会計検査において、内閣府の職員が、耐震施工の請負業者が実際には作成していなかった耐震計算書を作成していたなどと虚偽の説明を行ったり、実地検査の直前に補強工事を実施させたりするなど、検査妨害を行っていたことは、極めて遺憾である。
政府は、このような妨害行為が会計検査の根幹を揺るがしかねないものであることを重く受け止め、関係職員に対する適切な処分を行うとともに、会計法令等の遵守を徹底するなどして内部統制機能を確保し、再発防止に万全を期すべきである。
4 高速増殖炉の実用化を目指して研究開発が進められている原型炉もんじゅは、昭和55年度から平成23年度までの間に9481億円もの多額の予算が投じられてきたにもかかわらず、7年12月のナトリウム漏えい事故の発生以降トラブルが続発し、延べ14年以上にわたり運転停止状態にあることに加え、22年8月に炉内中継装置が落下した際、関係機関への通報に約1時間半もの時間が掛かるなど迅速な情報開示が行われなかったことは、極めて遺憾である。
政府は、トラブルの発生防止に努めることはもとより、トラブル発生時の迅速な通報体制を確保すべきである。また、福島第一原子力発電所の事故を踏まえたエネルギー政策の見直しに当たって、積極的な情報開示を行いつつ、もんじゅの在り方についても十分に検討すべきである。
5 バイオマス・ニッポン総合戦略に基づくバイオマスの利活用に関する政策について、平成15年度から20年度までの間に6兆5495億円もの予算が投じられた214事業のうち効果が発現している事業がわずか35事業にとどまっていることや、事業主体である農林水産省など6省のうち複数の省や部局において類似の事業が実施されていること、過半の施設において稼働や採算性が低調となっていることなど、非効率な事態等が見受けられたことは、遺憾である。
政府は、政策の費用対効果を明確化するとともに、企図した政策効果が十分に得られるよう諸課題を明らかにした上で、事業や施設の効率性の改善に向けて所要の措置を講ずべきである。
6 原子力安全・保安院は、本来、中立的な姿勢で原子力の安全規制に取り組むべき立場にあるにもかかわらず、原子力発電に係るシンポジウム等の開催に当たり、電力会社関係者に対し積極的に賛成意見を述べるよう要請していたことなどが明らかになるなど、業務執行の公正性及び中立性について疑念を生じさせたのみならず、原子力安全行政に対する国民の信頼を大きく失墜させたことは、遺憾である。また、資源エネルギー庁も同種の行為を行っていたことは、看過できない。
政府は、このような不適切な関与が繰り返されたことを深く反省し、責任の所在を明確にするとともに、原子力発電に係る公聴・広報活動等の実施状況について、公正性及び中立性を確保する観点から検証し、運営手順の見直しを行うなどして、再発防止に努め、国民の信頼回復に万全を期すべきである。