第177国会 2011(H.23)年5月19日「農林水産委員会」

Q1 農業用水の開発目標と実績について

▼大河原:
本日は、一般調査なので、日ごろから私がテーマにしております「水」という切り口で伺っていきたいと思います。
私は、都議会時代から消費者運動にもかかわりながら活動してまいりました。水は命の源で、安全、安心な食べ物、おいしいお米も野菜も果物も魚も肉もまさしくその豊かな水から作られる。この生命に欠くべからざる水の重要性は農林水産分野でこそ自覚されなければいけないし、大切にもされてきたというふうに思っております。
また一方で、私は人間の体自身が究極の環境で、人の健康にかかわる問題でも水や食べ物の問題は非常に大きいと思っております。私は東京選出の議員ですので、生産現場の微に入り細に入りという農業政策にはなかなか知識も持ち合わせません。しかし、都市に暮らす住民からは、逆に水道水がどこから来るのか、水道水が蛇口をひねれば出てくる、その水道の蛇口の向こう側にやっぱり思いをはせることができる住民を増やしたいということで、水を汚さない暮らしということでは石けん運動、あるいは足下の地下水を守る運動、こういうことをしてまいりました。
東京でも多摩地域では、地下水を日量で38万トンくみ上げ使っております。東京都はこれを水道水源として認めておらず、隠し財産のようなもので、中型ダム1個分です。東京の中には昭島市という小さな自治体が、地下水で水道水100%賄っています。
この委員会の委員の皆様もそれぞれのご出身ですが、水というものについて、様々な思いをお持ちかと思います。農林水産分野こそ、水がなくてはどうにもならない、そして水の番人ということにもなろうかと思う私の問題意識をまずご理解いただければうれしいです。
日本の水の需要の2/3が農業用水です。ダム問題にかかわるときも、洪水対策の治水、飲料用や工業用や農業用の利水という点で大変問題になります。
まず、農政において、これまで農業用水に関する開発目標とこれまでの実績について伺います。

△吉田公一大臣政務官:
大河原議員は都議会で水について大変関心を持っておられるということは、私も都会議員をやりましたのでよく存じ上げております。
平成19年の実績によると、年間約546億トンで、ウォータープラン21におきます農業用水の推計需要量は年間632億トンとなっております。

Q2 農業水利施設への投資累計と予算額について

▼大河原:
日本の水資源白書を見ますと、21年度に完成した都市用水又は農業用水の開発を目的とするダムなどの水源開発施設は、21年度完成分は全国で10施設、多目的が4つ、利水専用が6つで、開発水量総体では、農業用水は4,100万立米という開発量でした。そして、平成22年4月時点で都市用水又は農業用水の開発目的のダムで本体工事に掛かっているダムは全国で42施設です。計画開発量は年間で15億トン、そして都市用水が7億、農業用水では8億トンという開発目標をまだ持っているわけです。
農業用水は取っ付きにくく、その中身がなかなか一般市民にはわかりにくいものです。農業用水は伝統的な水の管理、仕組みが整っていて、水を増やしたり減らしたりということが容易にはできないと思います。
農業分野で農業水利施設へ非常に大きなお金が掛かっていると言われています。施設についてこれまでどれだけ投資をしてきたのか、累計と今年度の予算額を伺います。
△吉田公一大臣政務官:
我が国の農業水利施設は、基幹的水系だけでも49,000キロと言われております。末端まで含めますと何と40万キロで、ダムや用排水路、揚水機、排水機等の点的な基幹的施設が約7,000か所です。
これら農業水利施設のストックの資産価格は今どのぐらいの費用が掛かっているかという大河原議員のご質問ですが、建設費ベースで今まで25兆円のお金が掛かっております。平成23年度の農業水利施設整備に関する予算としては約1134億円を計上しています。

Q3 農業水利施設の検証と今後について

▼大河原:

農業生産の向上や食料供給力の確保という意味で、良好な農業用水それから営農条件を備えた農地がどれほど大事かというのは私もわかります。それを確保していくことが必要で、そこにお金を掛けなければならないことも理解をいたします。
しかし、余りにも技術を追ってそこに過重な投資を行い、また自然を損なうような、共生と相反するような整備がされてきたのではないかという思いも実は持っているわけです。
昨年の食料・農業・農村基本計画の中に都市農業の振興を入れていただきましたが、東京の農業者の皆さんと話すと、自分たちがやっている農業は大規模農業とは違うから、大きなかんがい施設もないし排水施設もないし、そういうところで地道にやってきたという思いで語られることが多いわけです。
今年の予算説明のときにも、ただいま政務官からご紹介のありましたストックについて、既に耐用年数を超過した基幹的水利施設、再建設ベースで3.1兆円と伺っています。つまり、老朽化したものを補修、維持していくことにこれからお金がどんどん掛かり始めるということも事実だろうと思います。耐用年数を超過した施設、それからこの10年以内に超過するものを含めると、全体でこれが3割になると。再建設ベースで5.6兆円と伺いました。
被災地の状況を見ますと、すばらしい景観だった田が被災し、そこに張り巡らされているパイプや壊れてしまった排水路を確認する中で、どうやってそれらの地域を再生していくのか、そしてこれまでの豊かな生産というものがそういうものに支えられていた、そのバランスがこれから大事になってくるのではないかと思います。
区画整理、整備済みの水田も155万ヘクタールあって、そのうちの3割、49万ヘクタールは排水が良好でないということも報告されています。こういうところに、今後、今までと同じような用排水施設を造っていくのか、その費用対効果はどうなのかということも、これまでとは違って消費者にも分かるような、そういう情報公開が必要と思います。
多額な投資を行ってきたというふうに私は申し上げますが、どのような評価を農水省自身がしているのか、また反省すべき点はないのか、この点はいかがでしょうか。

△篠原孝副大臣:

大河原委員ご指摘のとおり多大な投資をしてまいりました。それには理由がありまして、農地には水利施設が不可欠でございます。水田のことを考えていただくとお分かりいただけると思いますけれども、取水口が大事でございます。それから、農業用水路、ちゃんとつながっていないと水が来ません。ですから、万全の体制を整えなければいけないということで、一見無駄なように見えますけれども、全部つなげていないと役に立ちません。
今、問題が生じております。今、老朽化の問題、ご指摘いただきました。仙台平野、相当被害を受けておりますけれども、どういうところが被害を受けているかというと、やっぱりそろそろ耐用年数が来るのではないかというようなところが大変な状態になっております。適当なところで更新していかなければいけないかと我々は考えております。それに多大な投資がまた必要だということも十分承知しております。
それから、大規模化、高度化してまいりまして、典型的な例では霞ケ浦でございますけれども、非常に大きな施設になりまして、2万ヘクタールが影響を受けると。その水路一つ崩れても、一挙に2万ヘクタールの水田が作付けできなくなったりするおそれがあるわけです。こういった問題も生じてまいりました。
ですから、我々は、こういった今の問題を踏まえまして、食料・農業・農村基本計画におきましてはリスク評価をちゃんとし、施設のライフサイクルコストを低減していかなければならない、監視し評価し診断し、補修し、更新していくというのを的確にやっていくと、新たな保全管理方針というのを埋め込んであります。
特に、最近の農政で大事になってきているのは水田の汎用化ではないかと思います。農業者戸別所得補償で、水田に麦や大豆を作っていただかなければならないということで排水対策をきちんとしなければならないと。ところが、三分の一近くの排水が不良で、麦、大豆をきちんと作れないと。これでは農業者戸別所得補償は進みませんし、米余りが続いてしまうということで、こういったことはもう承知しておりますので今後は排水対策に相当力を入れていこうと思っております。
それから、無駄をしてきたのではないかということをご指摘いただいております。まず典型的な例で申し上げますと、農業用ダム、たくさん造ってまいりました。しかし、もう今後着手する国営事業においては島嶼部、沖縄の方の島嶼部を除きましてはダム建設を行わないようにしようということ等も計画の中にきちんと位置付けておりまして、無駄なところは省き、無駄とは言えないんですけれども、もっと必要なところを重点的に投資していくというふうに変えていくつもりでございます。

Q4 施設の多極化・分極化とエネルギー政策なども視野に入れた水循環施策について

▼大河原:

篠原副大臣からご丁寧に説明をいただき、私もそのことは十分理解をいたします。
しかし、もう少し言わせていただくと、やはり伝統的な用排水システムから技術に頼った排水に重点を置き過ぎており、その土地その土地の特徴に合わせた作物を作る、あるいは乾燥に強いものとか塩害に強いものを作る、そういう技術革新にもっとお金を使ってその地域に合わせたより良いものを開発するという発想をもう少し強く出していただけないものかと思います。
暗渠化されたパイプで地表から水の流れが見えなくなったり、水の流れが止まると水は駄目になります。そういう意味でもこれから先、大規模な設備でどこか一か所壊れても使えなくなるよりは、どこか切れても使えるような、発想の転換で多極化、分極化の形にする方法があるのではないかと思います。
水路は40万キロ、地球10周分ですね。そういう場所ですから、スマートグリッドやそういう新しいエネルギー源を得る場所、それぞれの分散化したところで用排水ができるようなことも考えられるのではないかというふうに思います。
民主党は、農から日本を再生するということを掲げて政権を取らせていただいた。ですから、この農林水産分野の復興、強化というものは私たちが最優先でやっていこうと志したものです。
鹿野農水大臣は20年前にも大臣を経験されて、2度目のご就任です。社会経済環境が激変をする中で、今、国難に直面をしているわけですが、農林水産分野での水問題については、まだまだ変わり切っていないという思いがいたします。実はダム問題も、山に木を植えている反面、ダムを造ることによって山を切り崩し、あるいは長年耕してきた田んぼや畑を水没させ、集落も水没させ、川をせき止めて水の流れ、水質も悪化させ、砂も海へ流れていかないようになって海岸が細ってしまう、こういう大きな水を分断している、そこになかなか農水省としての姿勢が見えてきていないという思いを強く持っております。
農林水産分野で水問題、言わば水の分断というふうに申し上げますけれども、水循環の分断など様々な影響を及ぼしているという認識は、大臣、おありでしょうか。

△鹿野道彦大臣:

今先生からご指摘をいただきました、頭首工等のいわゆる河川横断構造物というふうなものについてのいろいろ懸念ということも含めてお考えも示されたわけでありますけれども、このことが言わば一面、農業用水を取水をして、そして農業用水路及び農地を通じて河川に還元するというようなことによって健全なひとつの水循環というふうなものの形成がなされておる、そのことによって多面的な機能も発揮されているという面もあるわけであります。
しかし、一方、こういう農業用の河川横断構造物について河川の生態系というふうなものにも当然これは配慮をしなければなりませんから、そういう意味で、いろいろ魚道の新設なりあるいは改修をする際に、更に技術という開発も進めていかなければならないというふうなところもあるわけでございまして、今先生の言われた森林から河川、そして農地、農業用水、そして海というふうなひとつの流れというものを一体的にとらえて、今後、健全なる水循環というふうなものを、これを築いていくというふうなことは非常に重要なことではないかと、こんなふうに考えておるところでございます。

▼大河原:

大臣、ありがとうございました。農業生産基盤の整備、これをエコな視点で見直していただきたいというふうに思います。
主濱委員長のご出身の岩手県あるいは青森県には、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例というものがありまして、流域計画を作る、それを貫き通すのが水の循環という軸です。是非、今お答えをいただいた国の政策の中に、農業の方針の中にそういった視点を必ず入れていただきますよう訴えをいたしまして、質問を終わらせていただきます。