第177国会 2011(H.23)年5月31日「農林水産委員会」
Q1 「『食』に関する将来ビジョン」について
▼大河原:
本日は一般質疑なので、少し大きめの話を伺います。
政権交代をして何が変わったか。政権交代を目指して民主党はマニフェストにいろいろな、これまでの日本にないことを掲げました。私自身も、食と農林水産業の再生で日本を変えることに非常に共感をし、自分もそれを進める一員と思い活動を重ねてきました。
戸別補償に注目が集まり、いわれのないばらまきという批判を受けていますが、これまでの日本の農政にははっきりした理念がなかったと思っており、食と農林水産業の再生で日本を変えると掲げている民主党政権が、日本を変えていく農林水産業の基本的な理念、ビジョンをしっかりと国民に示すことが必要だと思います。
そこで、昨年の12月に田名部政務官がチームリーダとなってまとめられた「『食』に関する将来ビジョン」について、策定の経緯と位置付け、そして検証と進行管理についてお話しください。
△田名部匡代政務官:
大河原委員におかれましては、食と農林水産業で日本を変えると、その思いで今日まで取り組まれてこられましたことに敬意を表したいと思います。また、今日は、私、このプロジェクトの副本部長でありまして、ご質問をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
これは、平成21年12月に閣議決定されました新成長戦略(基本方針)を受けて、昨年12月、「食」に関する将来ビジョンとして食を中心に10のプロジェクトを取りまとめたものです。食や、またそれを支える農林水産業というのはまさに無限の可能性を持っていると、私もそのように思っておりますし、食また食文化、こういうものが新たな地域の活性化につながり、新たな産業を生み、そして雇用を生み出すと、そのように信じています。
そういう中で、例えば地域の資源を生かした六次産業化であるとか、また、食や食文化というものを取り入れて観光につなげていく、また、さらには輸出の促進、そしてエネルギーの問題、さらには医療や介護、こういったものとの連携、こういったことがプロジェクトの中にあるわけですけれども、まさに十分に食や農林水産業の持つすばらしさを生かすためには、農林水産省だけで取り組むのではなくて、関係省庁とのしっかりとした連携が必要だと考えています。様々な分野の有識者の意見を聞きながら、私も、このプロジェクトができてから関係省庁の政務官と直接お話をさせていただいて、ご理解をいただきながら一緒になって取り組んでいくという、そのことを取り組ませていただきました。是非とも、これからも様々な機会にこのビジョンを国民の皆様に紹介をしていきたいと思いますし、まさに今委員からご指摘がありましたように、取組が目標を掲げただけで終わらないように、どういう結果になっているのか、このことをしっかりと検証して、また更に次のステップにつなげていきたいと、そのように思っています。
こうした中で、大臣官房に今、食ビジョン推進室というものを設置する考えでありますので、是非ともこういうことを生かしてしっかり取り組んでまいりたいと考えています。
Q2 食の安全と消費者の信頼確保について
▼大河原:
「食べることは生きること」は、よく使われるフレーズで、そのとおりだと思います。食の重要性を再認識しつつ、日本の経済成長や地域の活性化につながるものだという意味で、もっと多くの方々にこのビジョンを知っていただきたいと思います。
このビジョンには、基本になる4つの視点が示されています。ひとつは地域資源を活用した農山漁村の活性化、2番目にアジアの成長力の取り込みとグローバル化、3番目は少子高齢化への対応、そして4番目に食の安全と消費者の信頼確保という視点が示されました。それぞれ大事な視点ですが、私は長く食の安全問題にかかわってきたことから、4番目の視点が非常に重要だと思います。
成長のための10のプロジェクトそれぞれに成長イメージを示されていますが、視点4の食の安全と消費者の信頼確保は全てのところに行き届いてないといけないと思います。この視点4についてどのような思いをお持ちでしょうか。どのような位置付け、重要性でしょうか、それをもう一度ご説明ください。
△田名部匡代政務官:
委員ご指摘のとおり、まさに食の安心、安全というのは何よりも大事でございまして、最初にこの10のプロジェクトを取りまとめたときに、食の安全、安心というのは当然もう全ての大前提になるということで、これをあえて加えるか加えないかというような話がありました。しかし、改めてこの視点4というところに書き加えて、食の安全、安心というものをしっかりとまた国民の皆さんにも、私たちもそれを大事にしながら取り組んでいくということをメッセージとして発信したわけですが、本当に、まさに委員のおっしゃったとおり、全ての基本は安心、安全が大前提だと、そのことをもってこのプロジェクトを進めてまいりたいと考えています。
Q3 食料安全保障について
▼大河原:
食べ物は安全であたり前と普通は思っています。流通しているもの安全性は全て確認されているということですが、食品事故、偽装問題などいろいろ起こっていて、食に不安が高まる。こういうことですから、やはり食の安全と消費者との信頼というのは非常に重要だと思います。
これまでの農政では全てのことにかかわるという視点は薄かっただろうと思っております。10の成長プロジェクトは、各プロジェクトが10年後を目途と発展のイメージまで示しています。政府一体で取り組むこれまでにないやり方を評価したいと思います。
計画図はできましたが中身はこれからです。地域の発展の姿、それから発展の目標、これを政府全体で示していこうという新しい試みなわけです。プロジェクトの10番目にある総合的な食料安全保障の確立について、具体的な施策、それをどういうふうにしていくのか、このことについてご説明ください。
△田名部匡代政務官:
先ほど委員もお話しになっておられました、食は生きることの全てであり、まさに命の源であります。まさに生命の維持に欠くことのできないものでありますから、食料の安定供給を将来にわたってしっかりと確保していくというのは国民に対する国家の責務であろうと思います。このことは鹿野大臣も常日ごろから私たちにそういった指示をしていただいているわけですが、食また食料に関することには農林水産省はまさに積極的に、主体的に責任を持って取り組んでいくべきだということであります。特に、あの震災後の食料確保のときにもそのことは大臣から強く私たちは指示をされ、つらい思いをしている皆さんのためにどんなときであろうとしっかりと食料を確保して提供していくことが農林水産省の役目なんだと、こういったことを、私たちはそういう指示を受けてまいりました。
まさにそういう災害時、また不測時のみならず、グローバル化の進展であるとか、生産・流通過程が様々複雑になっていますので、そういった中でいろんなリスクが生まれてきます。このため、今お話しいただきました食ビジョンのプロジェクトの10番目として、不測時のみならず、平時からしっかりと、国内の生産面のみならず、流通、加工、消費、また国際面を含めて、食料の安定供給に影響を与える可能性のある様々な不安要因についてしっかりと取組をしていこうということでこのプロジェクトを作らせていただきました。
例えば、どういうリスクが存在するのかをしっかり把握をする、その上でリスクの発生の可能性であるとか影響を分析をする、対処方針を決定してそれを実行していく、そして大事なことは、この実行したものがその結果どうであったかと、効果があったのか、なかったのかということをしっかりと検証をする、このことが重要だと考えています。まさにこれを恒常的に取り組むこととしているところであります。
Q4 食品安全庁設置に向けた現況ついて
▼大河原:
総合的な食料安全保障の確立は、非常に多岐にわたっており、単純に平時、有事という話ではありませんから、この対応策の検討、実施、評価は非常に難しいと思います。
食料安全保障の確立について多くの方に知っていただかなければならない。民主党政権は食料安全保障をはっきりと打ち出しました。グローバル化の中で問題になっている様々なこともこのことに密接です。この点に注意をして施策を進めていただきたいと思います。
食料・農業・農村基本計画と消費者基本計画の両方に、民主党がマニフェストにも掲げておりました食品安全庁の設置を入れるということができました。しかし、具体的な動きまだ見えていません。食の不安が高まっている中で、窓口が消費者庁、厚生労働省、農水とばらばらです。縦割り行政を排し、各省庁の連携が必要です。消費者との意見交換も重要です。
現在の進行状況と、こうした幅広い意見を取り入れることについてどのような姿勢を持っていらっしゃるのか、この点について最後に伺います。
△篠原孝副大臣:
食の安全行政につきましては農林水産省だけではありませんで、厚生労働省、それから消費者庁、食品安全委員会、そして最近の放射性物質に関係して原子力安全委員会と、関係する行政機関等は多岐にわたっております。これは世界でも同じような例が見られますけれども、ヨーロッパ諸国では少なくともシングルエージェンシーと称しておりまして、食べ物の安全性問題はひとつの役所で扱うべきであるということで、徐々にそのようになりつつあります。
今後の検討、進め方でございますけれども、今起こっている問題でちょっと例示させていただきますと、原発絡みでございます。出荷制限というもの、これは厚生労働省と農林水産省、相談いたしまして非常に早く手を打ってきたのではないかと思っておりますけれども、お茶の問題について、ちょっと意見調整ができずに2週間、3週間たっております。これも、1つの役所であればもっとスムーズに私は決着できるのではないかと思っております。
それで、どこの役所にするかという際どい問題でございますけれども、厚生労働省は、皆さんお気付きだと思いますが、少々でかくなり過ぎています、橋本行革で。私は、口に入るまでは食べ物を所管する、生産を所管する役所がやるのが一番自然で、ヨーロッパ諸国は大体そうなっております。日本もそのような方向を私は目指すべきではないかと思っております。