第177国会 2011(H.23)年8月23日「農林水産委員会」

第177国会 2011(H.23)年8月23日「農林水産委員会」

Q1 都市農業保全に向けた都市計画に関する審議について

▼大河原:

政権交代後の成果も含めて、農業分野で改革をしなければならない点について、質疑いたします。
食料・農業・農村基本計画に都市農業の振興と都市農地の保全がしっかり示されたことは、これまでの農政の中にはなかったことです。具体的な保全の方策を検討していくことは、都市で農業を営んでいる方々にとっては非常に明るい兆しです。
都市の農地は市街化区域の農地で、法律的には都市計画法に縛られており、国土交通省の分野です。大変画期的な重要な動きがありましたので、国土交通省都市計画制度小委員会での議論などをご紹介ください。

△小泉俊明(国交大臣)政務官:

社会資本整備審議会の都市計画制度小委員会におきましては、効率的でコンパクトな町づくりを進めていく観点から今後の都市計画制度の在り方について審議を行い、今年2月にそれまでの検討事項の整理を行ったところです。
この中で、従来、市街化区域は宅地化を図るべき区域として位置付けられており、区域内の都市農地は基本的に都市的土地利用への転換の種地として扱われてまいりましたが、今後は、食料生産や緑地、避難地、レクリエーションの場としての多様な役割も踏まえ、あって当たり前の土地利用として生かしていく方向が示されているところです。また、そのためには都市農業が継続できる環境を整えることが必要であることから、農業政策と連携した仕組みを目指していくこととされております。
今後、小委員会におきまして更に具体的な検討を進めていただく予定でありますが、都市農地の在り方につきましては、大都市と地方都市とで状況が異なる点や、農業政策などとの連携が不可欠である点も踏まえて、関係省庁と協力して総合的観点から検討をしてまいる所存です。

Q2 都市農業についての検討会設置について

▼大河原:

農林水産委員会で、市街化区域内の農地についての議論がこれまでなかなかできなかったと思いますが、国土交通省都市計画制度小委員会での議論を伺い、総合的な農業政策の議論が必要であり、都市計画法の改正に向け、農林水産省の立場をもっとはっきりとさせていただきたいと思います。
農林水産委員会は、小川敏夫委員長のときに、東京の生産地の視察をいたしました。都市農家の実態調査も進められており、その結果を生かしながら、農業政策として都市農業についての検討会、研究会を立ち上げるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

△鹿野道彦大臣:

大河原先生からお話しのとおりに、都市で農業をやっていただいておる、この都市農業は多様な役割を果たしていただいていると思っております。
今、国土交通省大臣政務官、小泉政務官からお話しのとおりに、いろいろなそういう中で住民の方々の意識も変わってきておるということでございますし、また、農業というものに対する都市におけるところの位置付けというものも検討していく必要があるという国土交通省としての認識も今話がなされたわけであります。それを受けまして、農林水産省といたしましても、当然のことながらこの都市農業というものをどういう形でこれから発展させていくかというようなことを踏まえまして、研究会等あるいは意見交換の場の設置というふうなものが必要だということから、私から既に指示を出し、今この検討会の準備を進めているところです。

▼大河原:

大臣から大変心強いご回答をいただきました。郡司議員を座長に(民主党農林水産部門都市農業)ワーキングチームができております。積極的にすり合わせをし、また多くの皆様のご理解をいただくために、多くの議員の皆様と活動をともに進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

Q3 遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認申請とパブリックコメントの状況について

▼大河原:

私は、食の安全について非常に大きな関心を持って活動してまいりました。昨年、名古屋で、生物多様性COP10、MOP5という大変大きな国際会議、締約国の会議がございました。
新政権になって、遺伝子組換え作物に対する考え方も大きく変わってきたと認識しており、(昨年、当時の)副大臣の指摘によって、農水省が出している(遺伝子組み換え作物の効用に焦点を当てた)パンフレットが修正されました。承認審査の手順書も昨年改められ、国民に分かりやすくなったと認識はしております。
「遺伝子組換え作物の安全を確保する仕組み」(資料参照)にしたがい、遺伝子組換え作物の流通、栽培に関する承認が数々申請をされています。
遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認申請のこれまでの件数、求めたパブリックコメントの状況、承認の可否についてご報告いただきたいと思います。

△吉田公一政務官:

遺伝子組換えは大変国民の関心の高いところでございまして、遺伝子組換えの農作物に関します、160か国が加盟しているカルタヘナ法に基づく承認にかかわるパブリックコメントは、昨年度以降、31種の遺伝子組換え農作物に対しまして8回に分けまして実施をしたところです。
そして、承認の前に意見を聴くということで、総数10,893通の意見の提出がございました。そのうち21品種につきまして承認をされたところです。

▼大河原:

今、吉田政務官からご紹介がありましたように、数々パブリックコメントなども上がるようになってきています。5月23日から6月21日の期間で募集した遺伝子組換え作物の第一種使用規程承認案件、これはセイヨウナタネ、トウモロコシ、ワタについてですが、これまでとは違い大変たくさんの意見が寄せられたということです。どしてこのようなことになったのか、またどのような対応をされたのか、この点についてもご報告をいただきたい。

△吉田公一政務官:

本年5月から6月にかけまして、セイヨウナタネ、それからトウモロコシ及びワタの4品種についてパブリックコメントを実施したところです。寄せられた9,643通の意見の大半でございますが、4品種に直接関連するということより、東日本大震災によります原発事故によって想起された食品に対する不安や、あるいはまた食品、飼料としての安全性に関するものでした。これらの意見につきましては、指摘された事項ごとに回答を作成し、8月8日にホームページで公表したところです。
今後とも、国民の意見等に丁寧に答えていくために、パブリックコメントの適切な実施やホームページ等を通じまして幅広い情報提供を行ってまいりたいと思っております。

Q4 遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認申請とパブリックコメントの状況について

▼大河原:

8月8日にパブリックコメントに対しての農水省からの回答も含めた報告書が出され、ホームページでも見られるようになっております。
政府のパンフレットには、日本は世界最大の遺伝子組換え農産物の輸入国であるとはっきり書いてあり、みんなぎょっとします。なぜかといえば、食べている意識がないからです。(例えば)油は、最終的な油から(遺伝子組換えの)DNAが検出されないので表示されていません。豆腐や納豆でも、混入率が5%以下であれば、遺伝子組換え大豆が入っていることは明記しなくていいわけです。
表示についても問題がありますが、遺伝子組換え作物、生物に対する承認状況、審査状況に問題があり、承認するに当たってのパブリックコメントの役割は重要です。
今回の回答書はこれまでと比べ大変丁寧に書いてありますが、どういう審査状況で、審査に当たる委員の方たちがどこでどのようなご意見だったかまでたどれるような回答に今後充実していただきたい。自分たちが出した意見に対しての回答がどうだったかを見付けるのに、今の状況では非常にわかりづらいです。
承認前にパブリックコメントを取り、意見に返答するようにはなりましたが、たくさんの意見が寄せられても承認されなかった例はありません。ですから、ますます、本当に大丈夫なのかと、ちゃんと知りたいというのが国民の声になります。

Q5 承認以降の対応について

▼大河原:

承認以降、望めば一般圃場でも栽培可能となりますが、誰でもどこでも種を入手して栽培してよいのか、また、それが可能なのか、どのような対応をされているのか。また、海外で承認された遺伝子組み換え作物を個人輸入して日本で個人が栽培することは可能なのかどうか、いかがでしょう。

△吉田公一政務官:

遺伝子組換え農作物を実際に我が国で栽培する際には、承認申請を行った開発者に対してはカルタヘナ法に基づきまして事前に情報提供させまして、国内栽培に関する情報を把握しております。農業者に対しては、周辺の農作物との交雑防止処置の徹底とともに、周辺農家等への理解を得るよう農林省としては指導いたしております。一部の都道府県、市町村では、条例やガイドラインにより栽培許可などの規制処置を実施しております。

▼大河原:

生物多様性への影響に関して言えば、カルタヘナ議定書は「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書」と、「バイオセーフティー」がわざわざ冠してある国際条約です。この意味を政権交代前は余り意に介されてなかったと思います。遺伝子組換えしたものが国境を越えて移動したときに、その移動先でどのような状況を起こすか、安全性の確認、規制に国際社会は厳しい目を持っています。食品としての安全性は食品安全基本法及び食品衛生法、飼料としての安全性は飼料安全法と食品安全基本法で判断され、最終的に一般的な使用のための承認となるわけです。
今回、8月8日にパブコメの結果が公示されましたが、官報での発表はまだだと思います。遺伝子組換え作物への国民の意識、認識が高まっていることを踏まえれば、日本の農業政策として、農水省の考え方をはっきりしてよいと思っております。遺伝子組換え生物への考え方は、(政権交代後)変化していると思います。今日のご答弁の中に、そのことをはっきり示していただければと思いました。
最後に、政権交代後の遺伝子組換え作物に関する政府の認識は変わってきているかを、筒井副大臣に伺います。

△筒井信隆副大臣:

遺伝子組換え農産物についての手続は、カルタヘナ法に基づいて学識経験者から意見を聴取して、そしてパブリックコメントを受けて承認の可否を決定をする、これはやっているわけでございます、以前からずっと続けていることでございます。
政権交代後においては、それらの手順について標準手順書を作り、その中でも記載されておりますが、審査報告書を国において作成して客観的な報告書を出す、これらによって透明性や詳しい情報発信、今まで以上にできるようになったと考えております。
さらには、第5回カルタヘナ議定書の締約国会議において、国際間の遺伝子組換え作物の移動による損害とか悪影響、これらに関する責任と救済、このルールも新たに定められたわけで、これはまさに政権交代後でございまして、そういう国際的な動きにまさにマッチをしながら適切に対処していく、こういうふうに考えております。

▼大河原:

バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書への「責任と救済」の明記は、6年も掛かって名古屋でまとまりました。鹿野大臣が議長をされ、名古屋という名前も補足議定書のタイトルに入っており、日本の大きな一歩です。今後ともしっかりと農政の中に位置付け、国民の理解を得ていただきたいと思います。