第178国会 2011(H.23)年9月29日「予算委員会」
Q1 総合水資源管理と水基本法について
▼大河原:
河川行政のあり方についてまずお尋ねします。
平成21年(2009年)の水資源白書には、章を改めて立て、「総合水資源管理の推進」が掲げられています。この7月には、国土交通省の組織再編で、河川局という国土交通省を代表するような局の名称がなくなり、「水管理・国土保全局」という名前に変わっています。
水を扱うということは、大変大きなことです。水資源の総合的な管理、流域を単位として協議体をつくる、合意形成していく、そして水に関する全体像を改めて可視化する、こういうことは非常に大きな役割を持つ画期的なことです。
まず総理に、水は限りある資源という意味から、この総合的な水の管理、そして流域全体で管理する方向性についてご所見を伺います。
△野田佳彦総理大臣:
近年の少雨化や年降水量の変動幅の増大は安定的な水供給の懸念材料となっております。また、安全でおいしい水や豊かな環境を望む国民のニーズも高まっております。さらには、今後、気候変動によって渇水の頻発などの影響が生ずるおそれもあることなど、水資源に関する多くの課題への対応が求められています。
そうした中で、ご指摘のあった総合水資源管理は、これらの水資源に関する現在直面をしている課題や将来予想される課題等を包括的、一体的にとらえて、水資源を総合的にマネジメントする方策であると承知をしております。住民、地方公共団体、事業者、その他の関係者の連携協力の下、総合水資源管理の取組の具体化を進めていくことが重要であると考えています。
エネルギーにおいてもベストミックスが必要です。水資源の管理も同様の観点から、今の総合水資源管理という観点は大変これから重要な概念であるというふうに思います。
▼大河原:
議員の間で水基本法を作る議論を進めています。
水は限りある資源で、国土交通省のこれまで河川局は、利水をする方々に対しては水利権を認め、また自治体は、渇水にならないように供給をしてきました。しかし、(渇水にならないように確保している個々の水利権量をたすと)トータルでは大きな水余り現象が起きています。
私は、総合的に水の管理を進め、効率よく無駄遣いをしない管理ができると思っています。水の総合管理、水資源を有効に使うという考え方について、国土交通大臣に担当の省としてお答えをいただきたいと思います。
△前田武志国土交通大臣:
大河原先生とは水問題等も含めて一緒に勉強してきたことがございまして、専門家でおありであるわけでございます。今総理がお答えされましたように、要は、生き物、動植物、生態系というのが水循環の中で維持されているわけでございますから、その水の統合的な管理というものを流域ごとにきちんとやっていかなければならない、そういう時代になったと思います。
そういうことを受けて、国の方では、国土審議会の水資源開発分科会において総合水資源管理という考え方を打ち出して、今まさしく委員がおっしゃったような観点から、水を持続的に活用できる社会の実現と健全な水循環系の構築を目指して、水量と水質、そして地表水と地下水、再生水、あるいは流域の上中下流といったことを全て含めて一体的にとらえて水資源を総合的にマネジメントしていこうと、こういう方策になりました。
一方、先ほどご指摘があったように、超党派で、自民党、公明党、社民党、それから新党日本含めてですが、もちろん民主党を含めて超党派で、議員連盟で統合的水管理の基本法を作ろうということでかなりのところまで進んでおりまして、今総務大臣をやっておられる川端先生がこの民主党側の取りまとめ役で、ほぼ民主党側の基本の考え方は整ったと、こういうふうに思っております。
そこで、利水の件について今ちょっとお触れになっているわけですが、その後、これからもご指摘の質問があるかと思いますけれど、一応今のところ、平成16年(2004年)度までの実績データを基に予測して、近年の実績データを加えて、今の利水の大きな体系といいますかフルプランというものが成り立っているところでございます。
Q2 水利用の予測と実績、水利権設定の見直しについて
▼大河原:
大臣から大変丁寧な答弁をいただきました。水基本法を早期に作れればいいと改めて思います。
利水の問題に戻り、流域で管理することがどうして大事か、どんな水余りが起きているかを少し説明させていただきます。
資料1は利根川水系の水利権の状況です。45の利水権者の合計が806トン、実績は707トン毎秒で、99トン毎秒余裕があります(資料2参照)。そして、この水利権には、ダムができたら安定した水利権として認めるという暫定水利権があり、暫定水利権を解消したとしても、64トン毎秒の余裕があります。1人が1日400リットル使うという大変多めの量を想定し換算しても、64トン毎秒は東京都の人口をはるかに超える1400万人分の飲み水にあたります。
利根川水系全体で見れば、それぞれが少し多めに予測をしていることがどれだけ大きな問題を引き起こしているかをお伝えしたいと思います。
資料3は東京都の実態です。最新といっても2003年の東京都の水需要予測と水利用実績で、東京都は1990年代から水需要は減り始め、昨年の2010年は、予測は600万トンですが実績は1日最大配水量でも490万トンで、110万トンの水が余っています。110万トンとは250万人分の水です。
東京都は保有水源が623万トンと国に届出をしております。しかし、実際には多摩地域で毎日38万トンの地下水をくみ、河川水とブレンドをして供給しており、この地下水を正規の水道水源としてよいと、私は都議会議員の時代から思ってまいりました。保有水源を過小申告していると言っても差し支えないのではないでしょうか。
予測と実績の乖離は、ますます開く傾向にあります。節水型機器の本格的な普及はこれからですから、乖離はどんどん開いていくと思うわけです。
先ほど大臣がフルプランも実績に基づいてとおっしゃいましたが、最新のデータに基づき過剰な水需要予測がないようにすることが必要と思っています。水利権の設定の見直しについても、所管の大臣のご所見を伺います。
まず、飲み水については厚生労働大臣にお願いします。
△小宮山洋子厚生労働大臣:
厚生労働省が、おっしゃったように水道法に基づいて飲み水の認可を行っておりますけれども、その際に、将来の水需要予測が人口予測等に見合った適切なものかどうか、また、その需要量を賄う水源量を確保しているか、これまでもその根拠を含めて審査をしてまいりましたので、これからもしっかりとその審査をしていきたいと思っております。
また、地下水についてもそこで組み込まれてやっているというふうに理解をしておりますが、そして、今東京都の差のお話がございましたけれども、これは最近、降雨量とか降雪量が減少して渇水の傾向があるということも考え合わせて、貴重な水資源、これについてその計画を慎重に審査していると思っていますが、今委員ご指摘のように、節水型のものが出たり、いろいろな新しい状況も出てきていると思いますので、そうしたことも踏まえて、正確な審査ができるように努めてまいりたいと思います。
▼大河原:
厚生労働省が水道という、利水の面では大変責任ある立場におられます。ダムの再評価をする意味でもこのことは非常に重要です。足下の地下水にも目を向けるということでは、それぞれの自治体、利水者が持っている固有の水源にも目を向けるという姿勢に立っていただきたいと思います。
次に、原水は同じですが、工業用水はまた別ですので、これについては経済産業大臣にご答弁をいただきます。
△枝野幸男経済産業大臣:
工業用水における水利権の設定は、河川法に基づいて国土交通大臣が経済産業省との協議を経て判断をされるという規定になっているところであります。
協議に当たりまして、経済産業省においては、ユーザー企業の現在の需要を確認し、各種統計に基づく水の使用量などによる将来需要の予測を踏まえて、その適正さを確認しているところでございます。
ご指摘のとおり、人口減少と様々な機器の省水力というんですかね、の発達によって民生用といいますか、あるいは業務用の部分のところは需要がそれほど伸びないというか、むしろマイナスになるという傾向が一般的に言えるんだろうと思いますが、工業用については必ずしもそれとパラレルにはいかない部分があろうかと思っておりますので、エネルギーで今ご心配を掛けている中で、水についてまでご心配を掛けるような状況にはしてはいけないと思っております。
その一方で、より適正に、本当に必要な水の量がどれぐらいであるのかというのは厳しくチェックをしていかなければならないと思っておりますし、できるだけ情報公開をして、様々な観点、視点から適正であるかどうかをチェックしていただくよう努力をしてまいりたいと思っております。
▼大河原:
次に、農業用水については量も多く、昔から続いている慣行水利権というものもあり、転用は難しいかとも思いますが、実際には転用も徐々にしていただいているところです。
水を全体で管理するという点で、農業用水のフレキシブルな使い方について農林水産大臣からご提案等、また水余り現象についてもご意見をいただきたいと思います。
△鹿野道彦農林水産大臣:
農業用水におきましては、慣行水利権とそれから許可水利権というふうなものがありまして、許可水利権につきましてはいわゆる取水の実績というふうなもの、報告義務があるわけでございますけれども、慣行水利権についてはその報告義務がないと、このようなことからなかなか取水実績というものをつかむことができにくい状況にあります。
そういう中で、いわゆる規模の小さい、そういうかんがい面積におきましても、規模の小さい慣行水利権の方はだんだん規模の大きい方向になってきておりますので、それはほとんどもう許可水利権に移行しております。そしてまた、慣行水利権におきましても、いわゆる施設等々の改築等々というふうなものを機会に、許可水利権の方にその機をとらえて移していくというようなことをやっております。
そういう取組を通じまして、いわゆる取水実績というふうなものをできるだけ把握できるようにやってまいりたい、こういうふうにしっかりとした管理をできるようにしていきたいと、こういうふうなことを考えておるところでございます。
▼大河原:
水がなければ成り立たない農林水産分野ですから、水の大切さは身にしみてみんなが知っているところです。しかし、実態が分からないというのは、水の総合管理という点から問題、課題です。先ほどのご発言のように、実態が分かるような、無駄遣いしないような管理に変えていただきたい。流域の一員として農業用水の問題もとらえるという新たな視野に立っていただきたいと思います。
第五次利根川・荒川フルプランは2008年に改定されたばかりですが、(予測と実績の)乖離が非常に大きく、国土交通省にはフルプランの精査が必要だと申し上げておきます。
東京の乖離量は110万トンで、東京都が八ツ場ダムに求めている量は50万トンで、八ツ場ダムに求めている量の2倍が余っているわけです。民主党はマニフェストに八ツ場ダムの中止、公共事業の見直しを掲げています。本当にダムが必要ならば造ればいいと思いますが、水余りであれば利水を目的とするダムは要らなくなると思うわけです。
過剰な水需要予測の見直しについて、行政刷新大臣はどのようにお考えでしょうか。
△蓮舫行政刷新大臣:
非常に興味深く拝聴させていただきました。
これまで行政刷新会議の下では、事業仕分あるいは各省自ら行っていただく行政事業レビューを通じて、個々の事務事業、その優先順位であるとか費用対効果であるとか、より効率的、効果的な代替手法というものについて議論をして、各省庁には自らその評価結果をご検討いただき、実施をしていただきましたが、今のご提案を聞いておりますと、新たな大きな政策課題、例えば貴重な水資源を、各省庁にまたがっているものをどうやって効率的に効果的に寄せて、そして大切に使っていけるのかという、まさに行政組織そのものの在り方だと思っておりますので、ぜひ関係大臣とも連携を取りながら対応させていただければと思っております。
▼大河原:
前田大臣は河川行政のご出身です。暫定水利権についてご説明をいただけないでしょうか。でも、これまで中止されてきたダムでこの暫定水利権の扱いはどのようだったでしょうか。取り上げられてしまったのか、継続になった例が多いのか、いかがでしょう。
Q3 暫定水利権について
△前田武志国土交通大臣:
まず、暫定水利権なんですが、水需要が増大して緊急に取水することが社会的に強く要請されている場合に、ダム等の水源開発施設というのがまだきちっとできていない、完成までの一時的措置として暫定水利権ということで与えているわけでございます。このような暫定水利権は、水源が安定的に確保されていないために通常、許可期間の到来とともに失効する、したがって、その都度、施設がまだできていないときには再度協議するというような形になっております。
先生の問いかけは、暫定水利権のままでずっと来ておるじゃないかと、もう必要ないんじゃないかというような感じのところかなと思うんですが、そうではないんですね。
先ほど来、各取水のお話がございましたが、例えば工業用水というものについては、工業地帯ができてフルに操業して、そして、想定していた計画の取水というのが、しかもそれは多分最大の水を使った場合の想定ですから、そういうその水利権が、設定された水利権がフルに使われるというような事態にはまだならない、顕在化していないという意味で、それほど計画よりも使っていないじゃないかという形になるんですね。もちろん、想定した、何といいますかね、経済に至っていないという面もあるでしょう。
それから、農業用水に至っては、これは慣行水利権というものになるわけなんですけれど、雨が降ればその雨を自然に使っているわけですから、農業用水に設定されている慣行水利権であれ、この水利権量というのはかなり大きく見積もっているんですね。しかし、それを数字で出てきたものを適用して下げたりすると、これは農業者は安定して田んぼをやっていくことができないということにもなりかねません。
それから、水道の方でいいますと、私、ついこの間、東京都の水道の歴史館というのがありますね。あれを見せていただきました。本当に先人たちは大変な努力をしているんですね。東京都自体は、ああやって玉川用水というのを江戸時代に引いて、実はもう水道から下水道まで完備した、それこそ水循環をちゃんとやっていたわけですね。しかし、そこに至るのに随分と努力をされてきた。そして、戦後の日本の成長を引っ張った東京圏も、多摩川水系だけでは間に合わずに、一時期神奈川県から大分借りた。それが今、利根川水系に移ってきた。そしてまた暫定水利権。実は、この暫定水利権の下で既に地下水をどんどんくんで、最大十メーター近く地盤沈下したというのは埼玉県ですよね。
そんなこともあるものですから、ちょっと今落ちちゃっているような数値だけでぎちぎちのことをやってしまうとこの地域が大変なことになると、このように思っております。
Q4 八ッ場ダムにおける暫定水利権解消について
▼大河原:
前田大臣からご丁寧な説明をいただきました。私も、暫定水利権がそんなに簡単だとは思っておりません。
しかし、中止になったダムの例を見ても、その暫定水利のまま継続をするという例もございます。そして、八ツ場ダムについて言えば、これまで大変長い年月が暫定のままですが、取水に支障が起きたこと、取水制限は受けましたが、給水制限に至ったことはないわけです。
東京都は人口も多く、遠くから水を運んできています。八ツ場ダムは、河川行政の史上最大の建設費をつぎ込む計画で、4600億という建設費にとどまらない。国税がそのほぼ同じ額掛かってくるわけで、ここに利益を得る1都5県の都民、県民にかかわらず、北海道から沖縄までの国民全員がこの八ツ場ダムについて意見を言う責任と資格があると思っています。
八ツ場ダムは、今検証中です。先日、関東地方整備局が、プロセスの一環で1都5県の知事に説明会をしたため、あたかももう最終結論が出たかのような報道になりました。富士川から導水路を付けるというような、八ツ場ダムの残りの事業費の5倍も6倍も掛かるような代替案と比べる以前に、暫定水利権の問題は単純ではないけれども検討する価値があります。その暫定水利権の解消に向けた検討をさせる権限は国土交通大臣がお持ちですので、ぜひ検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
△前田武志国土交通大臣:
実は、利根川筋におきましても、平成2年、6年、8年、9年、13年、取水制限をしているんですね。平成8年の渇水は夏と冬と2季にわたっているんですね。その都度、利水者同士の調整、そして地域同士の調整というのは大変な努力が必要で、またそれぞれ譲り合ってということをやっております。
そして、暫定水利権自体は期限が切れたときに再検討をしておりまして、これからその再検討の時期というのが来る水利権というもの、暫定水利権も多々あります。委員のご指摘のようなことも踏まえて対応してまいります。
Q5 基本高水の再計算について
▼大河原:
検証はまだ終わっておらず、検証についてはいろいろな方々が意見を持っており、批判的な意見も多くあります。可能な案は積極的に一つ一つ丁寧に検討いただいた上でご判断をいただきたい思いです。
民主党が公共事業の見直しということで中止を掲げた八ツ場ダムでいえば、馬淵(元)大臣は、河川の憲法ともいうべき基本高水の利根川についてゼロベースで再計算を命じられました。想定される計算上のモデルである基本高水を、大変大きな洪水量に設定すれば、それに合わせて河川整備計画は大きくなるわけで、再計算は大変重要なものです。
この基本高水の再計算について、国土交通大臣は、どのような思いをお持ちでしょうか。さんざんこの高水については批判を受けてきたわけです。ぜひ、ご答弁をお願いいたします。
△前田武志国土交通大臣:
かなり専門的なことにわたるかと思いますが、馬淵大臣のときにこの基本高水の再検討ということでやられました。そして、これは何か新しいモデルで再検討して、しかもそれを日本学術会議で検証をしてもらったようですね。そして、結果としては、これで今までの古いやり方とそごはないという結論を得ているようでございます。
そして、今の八ツ場ダムというのは、そういった全体の確率洪水といいますかね、これは一種の計画論ですから、実態がどうかというのは起こってみないと分かりません。そういう中で、17,000トンという八斗島基準地点における洪水を想定して施設計画を作成していると、このように承知をしております。
Q6 ダム事業の検証に係る検討について
▼大河原:
高水がなぜ大事かといいますと、これまでもこの利根川の基本高水は、八斗島で22,000トンですので、今度新しく出てきたものと大差がないわけです。この意味するところは、たとえ八ツ場ダムができても、22,000トンの高水があるということは、八斗島より上流で八ツ場ダムが貯水できるその治水効果は、余り大きくないということです。
先日、前田大臣はインタビューで、(ダム事業の検証に係る検討について)「検証はまだ九合目にも達していない」とご発言で、新たな視点が要るのではという思いでインタビューに答えていられたと思いますが、その点は、どのように思ってらっしゃるのでしょうか。
△前田武志国土交通大臣:
その前に、八ツ場ダムの話をちょっとされましたが、実は利根川流域、八ツ場ダムというのは西の方の流域です。その一番、みなかみの方に至る、あそこにはかなりの既にダムができております、東の流域にも。全体で相まって洪水調節をしていこうというわけで、八ツ場ダムというのは今欠けている西の方の流域に機能を発揮するというようなことになっております。
さて、今おっしゃったことは、たしか前原大臣のときに、83施設、84ダムについて検証をやりましょうということになって、各地方ごとに、地域ごとに検討の場をつくりました。八ツ場ダムの検討の場というのもあります。そこで、この間、1都5県の知事さんもお出ましになって検討会議を開かれたと、こう承知をしておりまして、その結果も報告を得ております。そういったことを踏まえて、有識者会議というところでそれをいろいろ評価して、そして最終的に国土交通大臣に意見具申をいただいて判断をするということになっております。
そのスキームでやっておりますが、ただ、3・11というようなあれだけの大きな、災害というよりも天変地異があったわけですから、その反省といいますか、それを受け止めて、やはり有識者会議にもそのことをちゃんと評価していただいて、その上で判断しますよということを申し上げたわけでございます。
▼大河原:
大臣の地元・奈良県も今回の台風で大変な被害を受けられました。奈良県には大滝ダムという大きなダムが造られております。ダムが完成して10年ですが、地割れが起きて水がたまらなかったり、そこから集落が移転をしなければならなかったり、元々地盤の点では疑問があるという方たちもたくさんおられました。私も質問主意書で、完成したが使われていないダム、使う前に地すべりの対策を打たなければならないようなダムが幾つあるのか伺いましたが、けっこうあります。
日本は地震国で、今回の大滝ダムでいえば、深層崩壊ということまで国民が知ることとなりました。技術も進み、古いダム計画ほど地質や地すべりの影響などをしっかりと確認する段階に来ていると思います。東日本大震災の震度はこれまで以上の大きなものでしたので、これに対応できるものでなければなりませんのに、新しい基準とはなっておりません。
深層崩壊の推定頻度(資料4)の各県別頻度があります。また(表層崩壊による)土砂災害の危険箇所は非常に多くあります。全国で土石流の危険渓流とか急傾斜地、全部合わせますと、51万か所以上です。小さな島国でいつの間にか54基も原発ができたということと同じように、いつの間にかこんなに危険箇所がある、こういうことをしっかりととらえた新たな視点で、私はこのダムの検証もしなければならないところに来ていると思います。
先ほど有識者会議にこうした新しい視点を注入するとおっしゃいました。有識者会議にはぜひ、懐疑的な見解をお持ちの学者さんも集めていただき、密室ではなく国民の目の前で議論をしていただきたい。もう一度ご答弁をお願いいたします。
△前田武志国土交通大臣:
委員の(深層崩壊の)資料を今見ておりますと、私の地元、奈良県34%とかなり高いです。このほとんどは先般来有名になった吉野郡十津川村というところで、私の本籍地でございます。しかも、本籍地はダムの湖底に没しております。そういったことも私の頭の中にはありまして、今委員のご指摘のようなことを踏まえて有識者委員会でいろいろとご検討をいただきたいと、こう思っております。
▼大河原:
地域固有の歴史、地勢というものがあり、そうした経験知といったものを語り継ぎ、それを実際の河川行政、実際の防災行政に生かすということが必要だと思います。
Q7 スーパー堤防について
▼大河原:
昨年の事業仕分でスーパー堤防は廃止と判定されました。この堤防は400年かけ12兆円かけても完成できないものです。しかし、国土交通省の検討見直し委員会では、(スーパー堤防事業を)縮小・継続するというまとめになっています。堤防はつながらないと効果がないと思いますが、蓮舫大臣、このことについてどのようなご感想をお持ちでしょうか。
△蓮舫行政刷新大臣:
ご指摘のいわゆるスーパー堤防、高規格堤防です。これ、まさに今、大河原委員がおっしゃったように、事業仕分を行ったときの実施率が5.8%、実際に全部完成するまでには400年掛かる、予算は大体12兆円。本当にこれが現実的な対応なのかという議論はさせていただきました。
その中で、私も実際に現地に視察に行ったんですが、既に整備をされた箇所、そこはスロープができて町づくりも新しくなっておりますが、その箇所と整備をされていない箇所というのは本当に壁一枚で見える境目というところなんですけれども、低いところと高いところがあって、何かあった場合にここの境目というのは命の境目になるというのは、非常に私もリスクの高さというのは見させていただいて仕分をさせていただきました。
この評価結果を受けて、国土交通省の中で検討会を設けて議論をいただいておりまして、23年度予算においては、現在実施中の箇所で中止した場合に社会経済活動に重大な支障を及ぼすものを除き予算を充当しないとされました。
平成24年度以降におけるこの高規格堤防の在り方については、引き続き国交省の中で検討をされていて、評価結果をしっかりと反映していただけるものと承知しています。
▼大河原:
コンクリートから人へと、本当に大事なところ、命を守るという視点でこの公共事業は精査をしなければならないというふうに強く思っております。
Q7 子ども・子育て新システムについて
▼大河原:
最後に、「チルドレンファースト」ということで、子どもたちのために子ども・子育て新システムの予算として、1兆円是非欲しいわけです。未来の子どもたちを守っていくための決意をぜひお聞かせください。
△野田佳彦総理大臣:
本年7月の子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめにおきまして、潜在ニーズを含む保育等の量的拡充と職員配置の充実など、質の改善を行うための追加所要額が2015年度で、委員ご指摘のとおり、1兆円超と見込まれております。また、本年6月に政府・与党社会保障改革検討本部が決定をいたしました社会保障・税の一体改革の成案において、税制抜本改革によって財源を措置することを前提に、2015年における子ども・子育て分野の追加所要額は0.7兆円程度、税制抜本改革以外の財源を含めて1兆円超程度の措置を今後検討することとされております。
政府としては、税制抜本改革とともに、早急に子ども・子育て新システムに係る法案を提出して、恒久財源を得て早期に本格実施できるよう、関係者と丁寧に協議を行って取りまとめを行っていきたいというふうに思います。