質問主意書08.04.23

2008(H.20)年4月23日提出(質問第114号)

八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定に関する質問主意書・答弁書の内容

 今年の1月23日の参議院本会議で、八ツ場ダム事業は当初計画から比べ、完成年度は15年遅れで2015年度、総建設事業費は倍増して4,600億円に膨れ上がり、基金事業や起債の利息を含めると総額が8,800億円にも達し、日本史上最高額のダムになることを私は指摘した。完成年度や事業費が当初の想定から大きくずれたことを鑑みれば、事業の妥当性を改めて厳正に検証する必要がある。

昨年12月、国土交通省関東地方整備局は、事業評価監視委員会で治水に関する費用便益費比の概要を明らかにし、治水に係る便益は8,525億円であるとした。そのうち、「洪水調節に係る便益の算定」として「ダムによる年平均被害軽減想定額として」8,276億円と計上した。この総定額は、治水経済調査マニュアル(案)(平成17年4月)に基づいて算定されたことが分かっているが、その算定の前提は不明である。

たとえば、治水経済調査マニュアル(案)は「被害防止便益の算定にあたっては、幾つかの想定が必要」であるとし、その一つ「破堤地点の想定」については、「堤防が機能しなくなる地点(破堤地点や越水地点)を想定する必要がある」とする。また、その地点は、「氾濫ブロック毎に被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」することになっているが、具体的にそれがどこを指すのかは、事業評価監視委員会では明らかにされなかったため、必要性の判断のもととなるこれらの重要な想定についてはブラックボックスに入ったままである。

利根川流域住民の安全確保や意識喚起、さらには納税者に対する河川管理者としての責務を果たすためには、これら想定について、誰もが分かる平易かつ明解な言葉で説明される必要がある。

そこで、以下、質問する。

▼質問1:

想定のもととなっている洪水の規模を明らかにされたい。

△答弁:

お尋ねの「想定のもととなっている洪水の規模」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、一級河川利根川水系吾妻川に建設中の八ッ場ダム(以下「八ッ場ダム」という。)の洪水時に発生する被害を軽減する便益の算定に当たっては、利根川水系に年超過確率200分の1までの洪水が生起した場合を想定している。

▼質問2:

利根川水系ではいくつの氾濫ブロックが想定されているか。

△答弁:

八ッ場ダムの洪水時に発生する被害を軽減する便益の算定に当たっては、一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の左岸側の6ブロックと、右岸側(利根川の派川である一級河川利根川水系江戸川(以下「江戸川」という。)に係るものを含む。)の9ブロックの合計である15の氾濫ブロックを設定している。

▼質問3:

その各ブロックにおいて、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」した地点はどこか。地名とともに、下流から何キロメートル地点の右岸、または左岸などと、可能な限り分かりやすく示されたい。

△答弁:

利根川の左岸側において破堤地点又は越水地点として想定した地点は、上流から順に、同川河口から、205キロメートル付近の地点である群馬県前橋市敷島町地先、151.5キロメートル付近の地点である群馬県邑楽郡明和町大輪地先、132キロメートル付近の地点である茨城県古河市中田新田地先、82キロメートル付近の地点である茨城県取手市長兵衛新田地先、78.5キロメートル付近の地点である茨城県北相馬郡利根町押付新田地先及び3キロメートル付近から18 キロメートル付近までの区間である茨城県神栖市波崎地先から太田地先までである。

また、利根川の右岸側については、上流から順に、同川河口から、196キロメートル付近の地点である群馬県高崎市萩原町地先、136キロメートル付近の地点である埼玉県北埼玉郡大利根町弥兵衛地先及び45.5キロメートル付近の地点である千葉県香取市川尻地先であり、さらに、江戸川の左岸側については、上流から順に、同川河口から、58キロメートル付近の地点である千葉県野田市関宿江戸町地先、48.5キロメートル付近の地点である千葉県野田市岡田地先、37キロメートル付近の地点である千葉県野田市今上地先、33キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字中野久木地先、26キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字木地先及び11.5キロメートル付近の地点である千葉県市川市大洲三丁目地先である。

▼質問4:

今現在、これら「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」した地点の堤防の状況はどのようなものか。

△答弁:

お尋ねの「堤防の状況」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、質問3についてで述べた地点の堤防のうち、例えば河川管理施設等構造令(昭和51年政令第199号)に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない堤防は、国土交通省の測量結果によれば、群馬県邑楽郡明和町大輪地先及び茨城県古河市中田新田地先の二地点である。

▼質問5

国土交通省関東地方整備局では、平成18年までに各水系で堤防詳細点検を行ったと聞くが、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」は、利根川の堤防の点検で判明した結果を反映させたものかどうかを明らかにされたい。反映をしていないとすると、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」する際、どのように想定したのかを分かりやすく示されたい。

△答弁:

 破堤地点又は越水地点については、各氾濫ブロックにおいて、想定する洪水の水位が、安全に流下できると評価した水位を超える地点がある場合に、氾濫ブロックのあらゆる地点において破堤又は越水が生じる可能性があるとの仮定の下で、氾濫ブロックにおいて被害が大きくなると想定される複数の地点のうち、被害が最大となると考えられる地点を設定したものである。

御指摘の「堤防詳細点検」は、浸透に対する安全性を照査するものであり、安全に流下できると評価する水位を判定するためのものではないため、破堤地点又は越水地点の想定にその結果を反映していない。

▼質問6:

八ツ場ダムが建設され、想定通りの降雨があった場合、想定した各氾濫ブロックで「被害額が最大となる地点」を流れる流量は、どの程度、軽減されるのか。流量および水位によって示されたい。

△答弁:

八ッ場ダムの洪水時に発生する被害を軽減する便益の算定に当たっては、お尋ねの「被害額が最大となる地点」における八ッ場ダム建設のみによる流量及び水位の低減量は算出していないため、お答えできない。

▼質問7

平成20年度予算案の策定にあたり、財務省は八ツ場ダムの治水に関する費用便益費比は2.9であるという説明を受けたか。受けたとしたら1から6のような詳細についても説明があったかどうかを明らかにされたい。

△答弁:

財務省としては、平成20年度予算編成過程においては、八ッ場ダム建設事業の治水に係る費用便益比が2.9となるということについて、説明を受けていない。

なお、財務省としては、国土交通省が平成20年3月に八ッ場ダム建設事業の再評価を行った後、同月に八ッ場ダム建設事業の治水に係る費用便益比が2.9となった旨の報告を受けている。