質問主意書08.05.12

2008(H.20 )年5月12日提出(質問第123号)

八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定根拠となる調査等に関する質問主意書

・答弁書の内容

国土交通省(以下「国交省」という。)は、流域住民の安全を確保するため、日ごろよりさまざまな調査および対策を行っていると理解する。

しかしながら、私が4月23日に提出した「八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定に関する質問主意書」に対する4月30日の政府答弁(以下「答弁」という。)を読むと、異なった治水対策業務の成果が有機的に機能していない側面が見られる。

治水対策とは、想定の困難な自然現象を相手に、ダムや堤防などのハードウェアの整備に、流域住民への関心啓発などのソフトウェアを組み合わせて行うものであり、そのすべては適切な現状把握の上に成り立つと考える。対策が現状に即したものでなければ、最悪の場合は、想定する被害は出ず、想定外の被害が生じることになりかねない。

また、答弁は、国交省が八ツ場ダムの治水に係る便益は8,525億円であるとした根拠がブラックボックスに入ったままだとして質問したことに対する回答にはなっていない。

そこで、国民の血税により国交省が行う種々の調査および対策が有機的に活用されているかどうかを確認するために、以下、質問する。

▼質問1:

国交省関東地方整備局では、平成18年までに各水系で堤防詳細点検を行ったと聞くが、そもそもこの「堤防詳細点検」の目的は何か。

△答弁:

堤防詳細点検は、「河川堤防の設計について」(平成14年7月12日付け国河治第87号国土交通省河川局治水課長通知)における「河川堤防設計指針」(以下「指針」という。)に基づき、直轄管理区間の堤防について浸透に対する安全性を照査しているものであり、河川堤防の質的整備の推進を図ることを目的としている。

▼質問2:

「河川管理施設構造令」は何のために誰が定めているものか。

△答弁:

河川管理施設等構造令(昭和51年政令第199号)は、河川法(昭和39年法律第167号)第13条第2項の規定に基づき、河川管理施設又は許可工作物のうち、ダム、堤防その他の主要なものの構造について河川管理上必要とされる一般的技術的基準を定める必要があることから、内閣が制定しているものである。

▼質問3:

「堤防詳細点検」も「河川管理施設構造令」も、その目的は流域に暮らす人々の生命財産を守るための治水対策であると考えるが、もしそうではないというのであれば、そうではないという論拠を示されたい。

△答弁:

堤防詳細点検や河川管理施設等構造令は、洪水等による災害の発生の防止等を図るために必要なものであり、御指摘の「流域に暮らす人々の生命財産を守るため」に重要なものであると考えている。

▼質問4:

費用便益費比を算出する前提として、国交省は「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」している。答弁で、それらの破堤想定地点は左岸で6箇所、右岸で9箇所と明らかにした。これらの地点は、国交省が平成18年までに利根川水系で行った堤防詳細点検では、どのような状態にあると確認されたか。「堤防詳細点検」で判明したことを各地点ごとに明らかにされたい。流域に暮らす住民にもわかるように表現されたい。

△答弁:

直轄管理区間における堤防詳細点検の結果によると、破堤地点又は越水地点として想定した地点のうち一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の左岸側の同川河口から、132キロメートル付近の地点である茨城県古河市中田新田地先、82キロメートル付近の地点である茨城県取手市長兵衛新田地先、利根川の右岸側の同川河口から136キロメートル付近の地点である埼玉県北埼玉郡大利根町弥兵衛地先、一級河川利根川水系江戸川(以下「江戸川」という。)の左岸側の同川河口から、58キロメートル付近の地点である千葉県野田市関宿江戸町地先、37キロメートル付近の地点である千葉県野田市今上地先、33キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字中野久木地先、26キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字木地先及び11.5キロメートル付近の地点である千葉県市川市大洲三丁目地先については、指針に基づく堤防の浸透に対する安全性の照査の基準(以下「照査基準」という。)を満足しないと評価した堤防の一連の区間内に位置するものである。

また、利根川の左岸側の同川河口から、151.5キロメートル付近の地点である群馬県邑楽郡明和町大輪地先、78.5キロメートル付近の地点である茨城県北相馬郡利根町押付新田地先、利根川の右岸側の同川河口から45.5キロメートル付近の地点である千葉県香取市川尻地先及び江戸川の左岸側の同川河口から48.5キロメートル付近の地点である千葉県野田市岡田地先については、照査基準を満足すると評価した堤防の一連の区間内に位置するものである。

利根川の左岸側の同川河口から3キロメートル付近から18キロメートル付近までの区間である茨城県神栖市波崎地先から太田地先までは、無堤のため、堤防詳細点検は実施していない。

なお、利根川の左岸側の同川河口から205キロメートル付近の地点である群馬県前橋市敷島町地先及び利根川の右岸側の同川河口から196キロメートル付近の地点である群馬県高崎市萩原町地先については、指定区間内にあり、群馬県は両地点において堤防詳細点検に類する浸透に対する安全性の照査を行っていないと聞いている。

▼質問5:

答弁では、群馬県邑楽郡明和町大輪地先と茨城県古河市中田地先の堤防は「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない」としているが、基準を満たしていないことに対する対策の緊急性はどのようなものか、日、月、年などの分かりやすい時間軸で二地点それぞれについて明らかにされたい。

△答弁:

河川整備は、堤防の整備状況に加え、河道断面の確保状況、過去の被災履歴、堤防決壊時の影響、上下流のバランス等を考慮して実施している。現在、利根川水系においては、堤防決壊時の影響が大きい利根川及び江戸川の右岸の堤防強化を重点的に実施しているところであり、御指摘の二地点を含む左岸の堤防強化については、右岸の堤防強化の進捗に応じて順次進めてまいりたいと考えているが、現段階において二地点の対策について具体的にお示しすることはできない。

▼質問6:

「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない堤防は、国土交通省の測量結果によれば、群馬県邑楽郡明和町大輪地先及び茨城県古河市中田地先の二地点である」という答弁に出てくる「測量」とは、どのような機会、あるいはどのような業務として行ったものか。また、この費用はいくらで、予算書のどのような項目に含められているか、明らかにされたい。なお、測量業務全体もしくは関連業務全体でしか分からなければ、この二地点のみの測量費を切り分ける必要はなく全体の額を明らかにされたい。

△答弁:

直轄管理区間においては、「河川定期縦横断測量業務実施要領について」(平成9年6月12日付け建設省河治発第29号建設省河川局治水課長通知。以下「要領」という。)に基づき河川管理の基本となる基礎資料を得るために、定期横断測量を実施している。お尋ねの「測量」は、要領に基づき「平成16年度管内定期横断測量(その3)業務」及び「平成16年度管内定期横断測量(その4)業務」として御指摘の二地点も含めて実施したものであり、要した費用は約1,900万円である。

また、当該費用は、治水特別会計治水勘定(当時)における(項)河川事業費(目)直轄河川改修費である。

▼質問7:

答弁で「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない堤防」とした二地点は、あくまで想定した各氾濫ブロックで「被害額が最大となる地点を破堤地点」のうちの二地点であると理解する。これらの二地点以外で、利根川本川及び支川における堤防で河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない地点があれば、そのすべてを明らかにされたい。

△答弁:

国土交通省の測量結果によると、利根川及び支川の直轄管理区間において河川管理施設等構造令に基づく高さ、天端幅等の基準を満たしていない堤防が存する区間の合計は、約500キロメートルであるが、すべての地点を正確にお示しすることは膨大な作業を要することから困難である。

▼質問8

国交省関東地方整備局が平成18年までに行った「堤防詳細点検」にかかった費用はいくらか。そのうち、利根川水系の「堤防詳細点検」にかかった費用はいくらか。また、この費用は予算書のどのような項目に含められているか、明らかにされたい。

△答弁:

指針を定めた平成14年度から平成18年度までに堤防詳細点検に要した費用は、国土交通省関東地方整備局全体で約57.9億円であり、そのうち利根川水系に係るものは約35.2億円となっており、当該費用は、治水特別会計治水勘定(当時)における(項)河川事業費(目)直轄河川改修費である。

なお、当該費用には、堤防詳細点検の一部と併せて実施した河川改修に必要な地質調査や設計等に係る費用も含まれている。

▼質問9:

答弁によれば、国交省は「『堤防詳細点検』は浸透に対する安全性を照査するものであり、安全に流下できると評価する水位を判定するためのものではないため、破堤地点又は越水地点の想定にその結果を反映していない」とする。この答弁は、同じ利根川水系の堤防の状態を把握するために、質問4の「堤防詳細点検」と質問6の「測量」を別々に行っており、それを互いに照らし合わせた利用を行っていないと理解するが間違いはないか。

△答弁:

御指摘の「互いに照らし合わせた利用」が何を指すのか明らかではないが、堤防詳細点検を行うに当たっては、堤防の高さ、天端幅等の形状について、要領等に基づき実施した定期横断測量の結果を活用しているところである。

▼質問10:

少なくとも、八ツ場ダム事業の費用便益費比のもととなる被害の想定に「堤防詳細点検」の結果は反映されていない。被害想定を行うために非常に有効なはずの「堤防詳細点検」結果が利用されないのは税金の無駄遣いではないのか。予算編成の観点、行政評価の観点からどのように考えるか、それぞれ見解を明らかにされたい。

△答弁:

堤防詳細点検は、河川堤防の質的整備の推進を図るために必要なものとして実施しているものであり、また、堤防詳細点検の結果を踏まえ、照査基準を満足しないと評価した堤防の一連の区間については、堤防の強化対策を進めることとしており、堤防詳細点検の結果は有効に活用されているものと考えている。