質問主意書09.03.18(質問第88号)

質問主意書09.03.18(質問第88号)

2009(H.21)年3月18日(質問第88号)

介護保険制度における要介護認定の改定と介護予防事業に関する質問主意書・答弁書の内容

介護保険制度は、2009年度から第四期介護報酬、改定要介護認定が実施される。2006年度の改正介護保険法施行以降、要支援認定、要介護認定を受けた利用者から、「身心の状態が変わらないのに、介護度が軽くなった」、「介護予防サービスでは、必要なサービスが利用できない」、あるいは「施設サービスの利用者負担が増え、家計が苦しい」といった声が寄せられている。また、要介護度にかかわらず、訪問介護の生活援助が利用できないという事例もある。

 このため、2009年度から、さらに給付抑制が強まるのではないかという強い懸念の声がある。

 介護を必要とする被保険者にとって影響の大きい、要介護認定改定について、またそれに関連する地域支援事業における介護予防事業の取扱いの変更について、以下の質問をする。

 

Ⅰ 要介護認定改定について

 

今回の要介護認定の改定にあたっては、2006年度に現行の訪問調査項目82調査項目に110項目を追加して、施設サービス利用者を対象に「高齢者介護実態調査」が実施された。その後、第一次モデル事業では、合計192項目から104項目を削除し、実施された。そして、2008年度には、合計88項目から14項目を削除し、コンピューターによる一次判定ロジックも変更して、第二次モデル事業が実施された。それらの結果をもとに、2009年度からの要介護認定の改定を実施予定と理解していたが、2009年2月に公表された『要介護認定調査員テキスト2009』では、認定調査員による訪問調査項目の選択基準についても変更が加えられていることが明らかになった。

 

▼質問Ⅰ-1:

選択基準の変更については、2006年度に研究事業が行われたとのことだが、研究事業の調査対象者数、現行の認定結果との相違など、具体的な研究結果について示されたい。

△答弁:

御指摘の研究事業は、平成18年度の老人保健健康増進等事業において実施された「新たな高齢者の心身の状態の評価指標の作成及び検証に関する調査研究」を指すものと考えるが、同研究においては、認定調査員が要介護認定に係る調査項目(以下「認定調査項目」という。)に掲げられた選択肢を選択する際の基準に関する研究が行われ、新基準の原案が作成されたが、当該原案に基づく認定結果と現行基準に基づく認定結果の比較等の研究は行われていない。その後、平成19年度の老人保健健康増進等事業において実施された「要介護認定調査の質向上を目途とし作成された新マニュアルと旧マニュアルとの相違に関する検討事業」において、86名を対象とし、要介護認定の二次判定結果の比較を行ったところ、現行基準に基づく判定より重度に判定された者が約21パーセント、軽度に判定された者が約11パーセントとなっている。

 

▼質問Ⅰ-2:

2009年度から実施される要介護認定に先立ち、2008年度に第二次モデル事業が行われたが、選択基準の変更は盛り込まれていなかったと認識している。なぜ、選択基準の変更を加えずに、第二次モデル事業を実施したのか、その理由を示されたい。

△答弁:

お尋ねの平成20年度に実施した要介護認定モデル事業(以下「第二次モデル事業」という。)は、一次判定におけるコンピュータ判定ソフトの変更が同判定結果に及ぼす影響及び二次判定における介護認定審査会(以下「審査会」という。)の審査用資料の変更が同判定結果に及ぼす影響について、検証を行うことを目的とするものであり、認定調査項目の選択基準の変更を同時に行った場合には、これらの検証が困難となることから、選択基準の変更を行わず第二次モデル事業を実施したものである。

 

▼質問Ⅰ-3:

訪問調査項目は結果として、現行82項目から74項目に削減されたが、削減された8項目は主治医意見書において反映されると説明されている。第二次モデル事業では、主治医意見書に削減された八項目がどのように記述されたのか、具体的に示されたい。また、2000年度以降、各年度の主治医に対する研修の実施状況を参加人数なども含めて具体的に示されたい。さらに、2009年度以降の主治医意見書についての研修は行われるのか、研修において八項目の記述を求めているのか、示されたい。

△答弁:

今般の要介護認定の見直しにおいては、現行の認定調査項目のうち、主治医意見書により代替可能な10項目を除外したところであるが、第二次モデル事業においては、当該項目について主治医意見書に実際にどのように記載されているかの調査は行っていない。

また、介護保険制度における主治医に対する研修については、厚生労働省が作成した実施要綱に基づき、都道府県及び政令指定都市が実施しているところであるが、当該研修の参加者数は、平成12年度が20,830名、平成13年度が16,552名、平成14年度が19,283名、平成15年度が15,222名、平成16年度が23,230名、平成17年度が29,151名、平成18年度が22,435名、平成19年度が22,076名である。

なお、厚生労働省としては、当該研修については、平成21年度も実施する予定であるが、今般の要介護認定の見直しも踏まえ、主治医意見書の記載についての研修を適切に行うよう、改めて、都道府県等に対し要請することとしている。

 

▼質問Ⅰ-4:

選択基準の変更については、介助が行われていない場合は「自立(介助なし)」を選ぶことが指示されていたが、2009年3月16日に発出された『介護保険最新情報』66では、「一般の方々からの意見を踏まえ、『介助されていない』に改める予定です」との記述がある。選択項目を「自立(介助なし)」から「介助されていない」に文言を変更したことにより、どのように認定結果が変わるのか、具体的な説明を示されたい。

△答弁:

お尋ねの「自立(介助なし)」という文言については、介助の方法についての質問項目であるにもかかわらず申請者の能力についての質問項目と誤解されるおそれがあることから、その見直しを行ったものであるが、その見直しと併せて、介助されていない理由や介助が不足している状況を認定調査票の特記事項に記載することとしており、申請者の状態を踏まえた、より適切な判定がなされるものと考えている。

 

▼質問Ⅰ-5:

2009年2月に公表された『介護認定審査会委員テキスト2009』では、要介護認定の二次判定を行うために検証すべき項目となっていた、(1)日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布、(2)要介護度変更の指標、(3)状態像の例、の3項目が削除され、認定審査会においては検討されないことに変更されている。この変更の理由と、認定結果に与える影響について、具体的な説明を示されたい。

△答弁:

お尋ねの日常生活自立度の組合せによる要介護度別分布、要介護度変更の指標、状態像の例については、これらを参照して行った要介護認定等が適正なものになっていない事例が確認されていることから、今般の要介護認定の見直し後は、介護認定審査会における審査用資料として当該指標を提供しないこととしたものであり、これにより、より適正な認定が行われるものと考えている。

 

Ⅱ 地域支援事業における介護予防事業の取扱いの変更について

 

地域支援事業においては、介護予防事業が実施されている。3月13日に発出された事務連絡「地域支援事業における介護予防事業の取扱いの変更等について」では、要介護認定における非該当者を特定高齢者の候補者とみなす取扱いが示されている。一方で、パブリックコメント「特定高齢者候補者及び特定高齢者に関する取扱いの変更等について」は、2009年2月26日から3月27日まで、募集期間中となっている。

 

▼質問Ⅱ-1:

パブリックコメントは、行政手続法にもとづき、行政機関が実施しようとする政策について、あらかじめ国民から意見を募り、意思決定に反映させることを目的としていると理解しているが、募集期間終了を待たずに、また、意見の集約と検証をすることなく、事務連絡を発出された理由について、示されたい。また、事務連絡を発出したあとに集約された意見についての取扱いを示されたい。

△答弁:

お尋ねの特定高齢者の候補者及び特定高齢者に関する取扱いについては、「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日付け老発第0609001号厚生労働省老健局長通知。以下「局長通知」という。)において定めており、その変更は、局長通知の改正により行うこととなる。

御指摘の3月13日付け事務連絡については、平成21年4月から地域支援事業の介護予防事業における特定高齢者の候補者及び特定高齢者に関する取扱いの変更等を行うに当たり、事業の実施主体である市区町村において混乱が起きることがないよう現時点の検討の方向性を示すために発出したものであり、今後、パブリックコメントにおいて寄せられた意見を踏まえ、特定高齢者の候補者及び特定高齢者に関する取扱いの変更等について、必要に応じ、更に検討を行った上で、局長通知の改正等を行うこととしている。

 

▼質問Ⅱ-2:

2006年度から実施されている特定高齢者施策の実施状況について、基本チェックリストを実施した者の数、そのうち特定高齢者候補者となった者の数、特定高齢者決定者数、特定高齢者施策への参加者数を各年度ごとに示されたい。

△答弁:

平成18年度の介護予防特定高齢者施策の実施状況については、特定高齢者と決定された者の数が15万7,518人、通所型介護予防事業及び訪問型介護予防事業に参加した者の数が5万965人となっている。

なお、平成19年度の実施状況については、現在集計中である。

また、基本チェックリストを実施した者の数及びこのうち特定高齢者の候補者となった者の数については、平成18年4月1日から同年11月30日までの8か月間に基本チェックリストを実施した者の数が587万9,939人、このうち特定高齢者の候補者となった者の数が29万4,534人である。また、平成19年4月1日から同年11月30日までの8か月間に基本チェックリストを実施した者の数が651万4,183人、このうち特定高齢者の候補者となった者の数が132万3,275人である。

 

▼質問Ⅱ-3:

特定高齢者施策には、(1)運動器の機能向上、(2)栄養改善、(3)口腔機能の向上、(4)閉じこもり予防・支援、(5)うつ予防・支援、(6)認知症予防・支援の6メニューがあるが、メニューごとの各年度の参加者数とメニューごとの実施効果について具体的に示されたい。

△答弁:

平成18年度の介護予防特定高齢者施策における各プログラムごとの参加者数は、運動器の機能向上プログラムについては、通所型介護予防事業及び訪問型介護予防事業で実施しており、それぞれ、2万6,891人、2,049人、栄養改善プログラムについては、通所型介護予防事業及び訪問型介護予防事業で実施しており、それぞれ、6,938人、4,983人、口腔機能向上プログラムについては、通所型介護予防事業及び訪問型介護予防事業で実施しており、それぞれ、8,210人、831人、閉じこもり予防・支援プログラムについては、訪問型介護予防事業で実施しており、3,133人、認知症予防・支援プログラムについては、訪問型介護予防事業で実施しており、2,134人、うつ予防・支援プログラムについては、訪問型介護予防事業で実施しており、2,500人となっている。

なお、平成19年度の実施状況については、現在集計中である。

各プログラムごとの実施効果については、各市区町村において検証を行っているところであるが、その結果については把握していない。