2013(H.25)年4月1日提出(質問第68号)
利根川・江戸川河川整備計画の策定に関する質問主意書・答弁書

【質問】
一 利根川・江戸川河川整備計画の策定を急ぐ理由
1 利根川・江戸川河川整備計画の策定スケジュール
関東地方整備局は利根川・江戸川河川整備計画をいつまでに策定しようとしているのか、策定までの具体的なスケジュールを示されたい。
2 利根川・江戸川河川整備計画の修正原案についての意見聴取及び議論
本年二月以降におけるパブリックコメント、公聴会および利根川・江戸川有識者会議で対象となったのは関東地方整備局が1月29日に示した利根川・江戸川河川整備計画原案である。今後、パブリックコメント、公聴会、利根川・江戸川有識者会議の意見に基づいて修正した原案について、パブリックコメントや公聴会で意見を再度聴き、さらに利根川・江戸川有識者会議で再度審議することは行わないのか。

【答弁】
一の1及び2について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成25年1月に国土交通省関東地方整備局(以下「関東地方整備局」という。)が公表した利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)(以下「河川整備計画(原案)」という。)の今後の検討の進め方については、現時点で未定である。
【質問】
一 3 平成18年12月18日の有識者会議で関東地方整備局が言明したこと
平成18年12月18日の第二回利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局が次のように言明した。
「その河川整備計画の原案につきましては、全体の意見を取りまとめて整理させていただいた上で、その後の有識者会議になろうかと思いますが、そこの段階でお示しさせていただければと思っております。その段階におきまして、また関係住民の方々にもインターネット等での意見募集、それから公聴会、そういったものを開かせていただいて、再度意見をいただいて、また、その整備計画の原案を修正させていただく。で、また修正したものにつきましても、再度ご提示させていただいて、また学識の先生方、それから関係住民の方々からご意見をいただくと、そういったことを何回か実施させていただきまして河川整備の案を取りまとめていきたいと思っております。」(同有識者会議の議事録四〜五ページ)
関東地方整備局は自ら言明したとおり、河川整備計画原案を修正した上で、その修正原案について利根川・江戸川有識者会議、パブリックコメント、公聴会で意見を聴き、さらにそのことを何回か繰り返さなければならないはずである。関東地方整備局は自ら言明したことについての責任をどうとるのか、政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】
一の3について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局においては、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画の策定を進めるに当たり、平成18年12月から河川法(昭和39年法律第617号)第16条の2第3項の趣旨に基づき学識経験を有する者等の意見を聴く場として利根川・江戸川有識者会議(以下「有識者会議」という。)を開催するとともに、平成22年9月から実施した八ッ場ダム建設事業の検証(以下「八ッ場ダムの検証」という。)の過程において、平成23年10月に河川整備計画相当の目標流量及び整備内容の案を設定した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」 (以下「報告書(素案)」という。)を公表し、さらに、平成24年5月に「利根川・江戸川において今後20から30年間で目指す安全の水準についての考え方」(以下「目指す安全の水準についての考え方」という。)を公表するなどしてきたところであり、これらのそれぞれの段階において、学識経験を有する者、関係住民等及び関係都県等からの意見聴取を実施してきたところである。これらを踏まえて、関東地方整備局において河川整備計画(原案)を公表し、学識経験を有する者及び関係住民等からの意見聴取を実施したところである。
【質問】
一 4 利根川・江戸川河川整備計画の策定を急ぐ理由
関東地方整備局は前述のとおり、3月18日の利根川・江戸川有識者会議において会議を打ち切る方針を示したが、なぜそのように利根川・江戸川河川整備計画の策定を急ごうとするのか、理由が不明である。きわめて重要な意味を持つ河川整備計画なのであるから、十分な議論を積み重ねた上で策定されるべきであるにもかかわらず、策定の期限が切られているかのように、関東地方整備局はこの河川整備計画の策定を急いでいる。利根川・江戸川河川整備計画の策定を急ぐ理由を明らかにされたい。

5 八ッ場ダム本体関連工事との関係
民主党政権下では、平成23年12月22日の藤村修官房長官裁定により、八ッ場ダム本体工事費の予算計上は利根川水系河川整備計画の策定が条件であった。この裁定により、平成24年度予算案では計上された八ッ場ダムの本体工事費約18億円が同年度の当初予算から凍結された。国土交通省はこの官房長官裁定をクリアするため、平成24年度に入って利根川・江戸川河川整備計画の策定作業を急ピッチで進めてきたが、昨年12月に政権が交代し、状況は不明瞭になっている。
そこで、八ッ場ダム本体工事との関係で次の三点を明らかにされたい。
(1) 昨年十二月の政権交代に伴って、八ッ場ダム本体工事費に関わる平成23年12月22日の藤村修官房長官裁定はどのように取り扱われているのか。
(3) 利根川水系河川整備計画は、八ッ場ダム建設計画の上位計画であるから、八ッ場ダム本体工事に入るならば、その上位計画である利根川水系河川整備計画による八ッ場ダム建設事業の位置付けがされるべきであり、平成23年12月の藤村官房長官の裁定はごく当然のことを求めたものであった。関東地方整備局が現在、利根川・江戸川河川整備計画の策定を急いでいるのは、同様な考え方により、八ッ場ダム本体関連工事を早期に進める前提条件として利根川河川整備計画の策定が必要と考えているからなのか。

【答弁】
一の4並びに一の5の(1)及び(3)について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、八ッ場ダム建設事業については、国土交通省において適切に対処することとしており、同省においては、平成23年12月22目に藤村内閣宣房長官(当時)が前田国土交通大臣(当時)及び前原民主党政策調査会長(当時)に示した裁定にかかわらず、早期完成に向けた取組を進めることとしている。また、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画については、その策定を八ッ場ダム建設事業の本体工事の着工の前提とするものではないが、「河川法の一部を改正する法律の施行について」(平成10年1月23日付け建設省河政発第2号建設事務次官通達)に基づき、できるだけ速やかに策定することとしており、現在、その策定を進めているところである。
【質問】
一 五 (2)平成25年度の予算案では、八ッ場ダム本体関連工事費約18億円が計上されている。平成24度予算案では計上された八ッ場ダム本体工事費約18億円と同じものである。その内容は資材置き場や工事用道路の建設、調査などであり、本体工事に入るための準備工事と調査である。なぜ平成24度予算案では本体工事費とされていたものが、平成25年度予算案では本体関連工事費という名称に変わったのか。

【答弁】
一の5の(2)について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成24年1月に国土交通省水管理・国土保全局が公表した「平成24年度水管理・国土保全局関係予算概要」及び平成25年2月に同局が公表した「平成25年度水管理・国上保全局関係予算概要」のいずれにおいても、八ッ場ダム建設事業に係る予算については、「本体工事の準備に必要な関連工事を進めるための予算を計上。」と記載されている。
【質問】
二 利根川水系全体の河川整備計画の策定について
1 河川法の一部を改正する法律等の運用について
平成10年1月23日の通達(河川法の一部を改正する法律等の運用について)は、河川整備計画の策定単位は一級河川の指定区間外は水系ごとを基本とすべきこととしている。利根川には大きな支川がいくつもあるから、それらの支川も含めて、水系全体の直轄区間の河川整備計画が策定されなければならない。支川と本川は相互に関係しているから、当然のことである。平成18年11月〜20年5月に行われた利根川水系河川整備計画の策定作業では、利根川水系を利根川・江戸川、鬼怒川・小貝川、霞ケ浦、渡良瀬川、中川・綾瀬川の五つのブロックに分け、本川だけでなく、支川のブロックそれぞれにも有識者会議を設置し、水系全体の河川整備計画の策定が進められようとした。しかし、今回策定されようとしているのは本川だけの河川整備計画である。利根川・江戸川という本川だけの河川整備計画の先行策定は平成10年1月23日の上記の通達に違反しているのでないか。このことに関して政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】
二の1について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、河川法第16条の2第1項に規定する河川整備計画の策定単位については、「河川法の一部を改正する法律等の運用について」(平成10年1月23日付け建設省河政発第五号・河計発第三号・河環発第四号・河治発第二号・河開発第五号建設省河川局水政課長、河川計画課長、河川環境課長、治水課長及び開発課長連名通達)において、「その策定単位は、一連の河川整備の効果が発現する単位として原則・・・一級河川の指定区間外は、水系ごとを基本とすること。・・・ただし、河川の状況に応じ上記単位によらないことができるものであること。」とされており、この通達に基づき、利根川水系の直轄管理区間における同項に規定する河川整備計画については、関東地方整備局において、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画、渡良瀬川河川整備計画、鬼怒川河川整備計画、小貝川河川整備計画、霞ヶ浦河川整備計画及び中川・綾瀬川河川整備計画(以下「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画等」という。)の策定を進めているところである。
【質問】
二 2 全国の1級河川の事例
全国の1級河川の直轄区間で河川整備計画が策定されてきている。1級河川の直轄区間で今までに河川整備計画が策定された水系の数、及びそのうち、水系を支川と本川に分離して本川の河川整備計画を先行して策定した河川があれば、その水系名を明らかにされたい。

【答弁】
二の2について
御指摘の「支川と本川に分離して本川の河川整備計画を先行して策定した」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成25年4月1日時点で、1級河川の直轄管理区間について、河川法第16条の2第1項に規定する河川整備計画が策定されている水系の数は81、このうち、1の水系に係る1級河川の直轄管理区間を分割して複数の河川整備計画が策定されている水系は石狩川水系である。
【質問】
二 3 利根川水系で本川先行の河川整備計画を策定する理由
関東地方整備局は利根川水系においてなぜ、利根川・江戸川という本川だけの河川整備計画を策定しようとするのか、また、平成18年11月〜20年5月には利根川水系全体の河川整備計画の策定作業が行われていたのに、なぜ、平成24年度から利根川・江戸川という本川だけの河川整備計画の策定作業に変わったのか、それらの理由を明らかにされたい。
4 水系全体の河川整備計画の策定時期
鬼怒川・小貝川、霞ケ浦、渡良瀬川、中川・綾瀬川を含めて、利根川水系の直轄区間全体の河川整備計画をいつ策定する予定なのか。策定予定時期を明らかにされたい。
5 利根川・江戸川河川整備計画と各支川の河川整備計画との齟齬
支川と本川は相互に関係しており、特に支川の状況が本川に影響するので、本川だけの河川整備計画を先行して策定すれば、支川の河川整備計画を策定する段階で支川と本川との関係で齟齬が生じることが予想される。利根川水系において後で策定する支川の河川整備計画と、利根川・江戸川河川整備計画との間に齟齬が生じた場合、どうするのか、利根川・江戸川河川整備計画を策定し直すのか、このことについて政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】
二の3から5までについて
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画等については、関東地方整備局において、相互に整合を図りつつ、それぞれ策定を進めているところであり、それらの策定の予定時期についてはいずれも現時点で未定である。
【質問】
三 治水安全度と治水目標流量の引き上げ
1 治水安全度と治水目標流量の一方的な引き上げ
平成18年11月からの利根川水系河川整備計画の策定作業で示された河川整備計画のメニューでは治水安全度は本川1/50、支川1/30であった。この治水安全度を前提としたメニューに対して5つの有機者会議で議論がされ、パブリックコメントと公聴会による意見聴取が行われた。八斗島地点の治水目標流量は明示されていないものの、当時の委託調査報告書を見ると、毎秒15000立方メートル程度で設定されていた。
ところが、平成24年度からの策定作業では利根川本川の治水安全度は1/70〜1/80に引き上げられ、それに伴って、治水目標流量は毎秒15000立方メートル程度から17000立方メートルへと、約2000立方メートルも大きくなった。
有識者会議で議論され、且つ、パブリックコメントと公聴会で意見を聴取したメニューの前提条件を関東地方整備局の思惑だけで、しかも、何の説明もなく、変えてしまうことが許されるのであろうか。このことについて政府の見解を示されたい。
2 治水安全度に関する埼玉県の発言
利根川・江戸川有識者会議で、治水安全度引き上げの理由を示してほしいという委員からの質問があり、関東地方整備局が昨年十月四日の第六回会議で示した資料は次のものであった。
八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場(第1回幹事会、平成22年10月1日)の議事録
「○埼玉県県土整備部長代理
同じく埼玉県の高沢でございます。
利根川は、過去にカスリーン台風の洪水でも本県を含めまして重大な被害をもたらしております。また、現在でも一旦決壊をすれば、首都圏に大きな被害が生じると思っております。また、本県につきましては、本県の東側の地域でございますが、利根川よりも低いところに人と資産が集中しております。このため、利根川の治水安全度は埼玉県にとりましても非常に大切でございますので、このようなことから適切な治水安全度を設定するように検討していただきたいということでございます。よろしくお願いいたします。」
しかし、この議事録では、埼玉県は適切な治水安全度の設定をと述べているだけであって、引き上げるべきだという趣旨のことは一言も言っていない。この埼玉県の発言がなぜ、治水安全度引き上げの理由になるのかを説明されたい。
3 治水安全度引き上げの真の理由
以上のことを踏まえれば、治水安全度1/50から1/70〜1/80への引き上げは、関東地方整備局の思惑だけで行われたものであると考えざるを得ない。関東地方整備局がどのような理由で治水安全度を引き上げたのか、その真の理由を明らかにされたい。なお、利根川流域は人口と資産が集中しているから、治水安全度を引き上げたということならば、平成18年11月からの策定作業の段階でそのことはすでに考慮されていなければならなかったはずであるから、それは理由にならないことを申し添えておく。

【答弁】
三について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局は、第四回有識者会議において、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画で目標とする治水安全度について、おおむね年超過確率50分の一とする旨を示したところである。しかしながら、その後、一の3についてで述べた八ッ場ダムの検証の過程において開催した八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場第一回幹事会における「適切な治水安全度を設定するように検討」することを希望する旨の意見等を踏まえ、八斗島地点における河川整備計画相当の目標流量を毎秒1万7千立方メートルと設定した報告書(素案)を公表したところである。さらに、一の3についてで述べた目指す安全の水準についての考え方において、利根川水系以外の直轄河川の河川整備計画では、河川整備計画の目標流量の規模はおおむね年超過確率20分の1から70分の1までの範囲となっていること等を踏まえた上で、利根川水系の社会・経済的重要性を考慮し、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画において目指す同地点における治水安全度を年超過確率70分の1から80分の1とすることが妥当であること及びこの年超過確率に相当する流量を算出すると毎秒1万7千立方メートルであることを示したところである。このように、関東地方整備局は、これらのそれぞれの段階において、治水安全度や目標流量についての考え方等を示すとともに、学識経験を有する者、関係住民等及び関係都県等からの意見聴取を実施してきたところであり、これらを踏まえて、同地点の目標流量を毎秒1万7千立方メートルとする河川整備計画(原案)を公表したところである。
【質問】
四 カスリーン台風の実績流量について
1 カスリーン台風実績流量に関する新たな資料
利根川・江戸川河川整備計画原案の治水目標流量17000立方メートル/秒は、国土交通省が利根川洪水流出計算の新モデルを使って1/70〜1/80の治水安全度に相当する流量を算出したものと説明されている。この新モデルで昭和22年カスリーン台風の再来計算流量は21100立方メートル/秒(八斗島地点)であり、同台風の実績ピーク流量の公称値17000立方メートル/秒と比べて、4000立方メートル/秒以上も過大であることから、新モデルの科学性の有無が利根川・江戸川有識者会議の議論で大きな争点となってきた。
さらに、本年2月21日の第九回利根川・江戸川有識者会議で「治水調査会利根川小委員会・利根川委員会の議事録」が委員からの要求により配布された。これはカスリーン台風直後の昭和22年11月から24年二月までの建設省内の委員会の議事録である。この議事録から、カスリーン台風洪水実績流量の公称値17000立方メートル/秒は政治的に決められたものであり、実際の実績流量はそれより小さい数字で、17000立方メートル/秒以下であったことを読み取ることができる。
その結果、新モデルによるカスリーン台風の再来計算流量21100立方メートル/秒と実績流量との差は6000立方メートル/秒以上にもなり、新モデルは、過大な洪水流量を算出する非科学的な洪水流出計算モデルであることが一層明白になったと考えられる。このことについて政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】
四の1について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、国土交通省は、より精度の高い流出計算モデル(以下「新モデル」という。)を構築し、新モデルによる洪水の再現性の検討等を行うこととし、その結果を「利根川の基本高水の検証について」として取りまとめ、平成23年9月に公表したところである。
また、当該検証に関しては、同年1月13日に日本学術会議に学術的な観点からの評価を依頼し、同年9月1目に、新モデルについて、基礎方程式及び数値計算手法に誤りがないことを確認するとともに、観測データのない場合及び計画策定へ適用する場合に必要となる新モデルの頑健性を確認し、さらに、新モデルをそのような場合に適用したときの不確定性を評価した上で、新モデルによって計算された八斗島地点における昭和22年の既往最大洪水流量の推定値等は妥当である旨の回答を得たところであり、同省としては新モデルは妥当なものであると考えている。
なお、新モデルの構築に当たっては、同年11月から昭和23年9月の治水調査会利根川小委員会及び昭和24年2月の同調査会利根川委員会における議論は基にしていない。
【質問】
四 2 カスリーン台風実績流量に関する関東地方整備局の事実歪曲の回答
昨年9月25日の第五回利根川・江戸川有識者会議の配布資料3―3で、カスリーン台風実績流量に関するパブリックコメントの意見に対する回答として、関東地方整備局は昭和二十五年の群馬県「カスリン颱風の研究」における安芸皎一東京大学教授の論文を引用した。その引用部分だけを読むと、安芸教授が実績流量として16900立方メートル/秒が正しいと主張しているように受け取れるが、引用した文章には続きがあり、次のように安芸教授は16900立方メートル/秒より10〜20%少ない数字が妥当だと結論付けている。
「約1時間位16900立方メートル/Sの最大洪水量が続いた計算になる。しかし之は合流点で各支川の流量曲線は変形されないで算術的に重ね合わさったものとして計算したのであるが、之は起こり得る最大であり、実際は合流点で調整されて10%〜20%は之より少くなるものと思われる。川俣の実測値から推定し、洪水流の流下による変形から生ずる最大洪水量の減少から考えると此の程度のものと思われる。」(二八八頁)
安芸教授は合流点での調整を考えれば、16900立方メートル/秒より10〜20%小さい値、すなわち、13400〜15300立方メートル/秒が妥当だと判断しているにもかかわらず、関東地方整備局はその結論部分をカットして、安芸教授が16900立方メートル/秒が正しいと言っているように誤解させる恣意的な引用を行った。関東地方整備局がこのように事実を歪曲した回答を行ったのは由々しきことである。このことについて政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】
四の2について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、関東地方整備局は、第5回有識者会議の資料1313(以下「第5回有識者会議資料」という。)の8ぺージにおいて、カスリーン台風における八斗島地点の最大流量の推定値である毎秒1万7千立方メートルについては、カスリーン台風における同地点上流の3地点のピーク流量付近の観測流量を流下時間の時間差を考慮して重ね合わせて算出したものである旨を示したところであり、さらに、この算出方法について分かりやすく説明するため、第5回有識者会議資料の9ぺージにおいて、「カスリン颱風の研究 利根水系に於ける災害の実相 目本学術振興会群馬懸 災害対策特別委員会報告」を引用したものである。なお、河川整備計画(原案)における8斗島地点の目標流量については、前述のカスリーン台風における同地点の最大流量の推定値ではなく、三についてで述べた考え方等により毎秒1万7千立方メートルとしたものである。
【質問】
五 利根川・江戸川河川整備計画原案の治水対策に要する費用
1 治水対策に要する費用の内訳
本年2月21日の第九回利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局は「河川整備計画原案の治水対策の具体的なメニューとして、現時点で想定している費用は約8600億円である」と答えた。この約9600億円の整備項目別の内訳を示されたい。なお、整備項目は、首都圏氾濫区域堤防強化対策、築堤、高潮堤防、河道掘削、樹木伐採、浸透対策、稲戸井調節池、田中調節池、烏川内調節施設、行徳可動堰、江戸川水閘門、江戸川分派対策、高規格堤防、防災関係施設、ダム再編、八ッ場ダムなどに分けて示されたい。
4 首都圏氾濫区域堤防強化対策事業
五の2で述べた八ッ場ダム建設事業検証の開示資料では首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の事業費は1687億円となっているが、一方、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の開示資料では事業費の総額が2690億円で、約1000億円も大きい。河川整備計画原案における首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の費用は実際にいくらなのかを明らかにされたい。
5 増額の可能性がある整備項目
ここでは高規格堤防と首都圏氾濫区域堤防強化対策事業を例にとって、河川整備計画原案の治水対策の費用が関東地方整備局が述べた約8600億円より大幅に膨れ上がることを示した。この二つの例の他に、費用の過小見積もりになっている整備項目はないのか、その可能性がある整備項目があれば、その項目と実際の整備費用を明らかにされたい。

【答弁】
五の1、4及び5について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、第9回有識者会議で関東地方整備局が述べた約八千六百億円については、河川整備計画(原案)の作成時点において、河川整備計画(原案)に示した治水対策における具体的な事業に要する費用を積算したものであり、適切なものと考えている。
この約8千6百億円の内訳は、首都圏氾濫区域堤防強化対策が約1480億円、堤防の整備が約1510億円、高潮対策が約60億円、樹木伐採を含む河道掘削等が約3000億円、浸透・侵食対策が約361億円、稲戸井調節池の整備が約50億円、田中調節池の整備が約130億円、烏川調節池の整備が約870億円、行徳可動堰の改築が約30億円、江戸川水閉門の改築が約230億円、江戸川の流頭部における分派対策が約100億円、内水対策が約30億円、緊急復旧活動等の拠点整備等の危機管理対策が約110億円、既存施設の機能増強が約20億円、八ッ場ダムの建設が約550億円である。
なお、一の3についてで述べた八ッ場ダムの検証に係る検討においては、「八ッ場ダムを含む治水対策案」において首都圏氾濫区域堤防強化対策に要する費用として、同案の作成時点における残事業費を計上しており、その額は約1687億円である。また、御指摘の「2690億円」は、現時点における同対策の全体事業費であり、既に施行したものに要した費用を含んでいる。
【質問】
五 2 総額8600億円の整備費用への疑問
平成23年度に行われた八ッ場ダム建設事業検証の開示資料の中に、八ッ場ダムを含む治水対策案の概算事業費として利根川本川の整備項目別費用が示されている。その総額は8347億円で、上記の8600億円と同等の費用となっている。その内訳をみると、高規格堤防の費用は82億円だけである。本年3月18日の第11回利根川・江戸川有識者会議において、河川整備計画原案では約22キロメートルの高規格堤防を整備することになっているのであるから、82億円はあまりにも過小ではないかと、委員から指摘があった。それに対して、関東地方整備局は8600億円には高規格堤防は含まれていないと答えた。第9回会議では総額が8600億円と説明したのに、追及されれば、実は高規格堤防は含まれていないと答えるのはあまりにも無責任である。関東地方整備局の説明は信頼性が欠如していると言わざるを得ない。このことについて政府の見解を示されたい。
3 高規格堤防(スーパー堤防)の整備費用
河川整備計画原案では約22キロメートルの高規格堤防を整備することになっているが、この高規格堤防の整備に要する全費用の概算を示されたい。因みに、高規格堤防は1キロメートルあたり数100億円以上の整備費用がかかるとされているから、約22キロメートルの高規格堤防の整備費用を加算するだけで、河川整備計画原案の総額は一兆何千億円になると予想される。

【答弁】
五の2及び3について
御指摘の意味するところが必ずしも明らかではないが、河川整備計画(原案)の作成時点において、高規格堤防整備事業の具体的な施行の場所が末定であったことから、第11回有識者会議において、関東地方整備局は、同事業に要する費用については「8600億円の中には現時点では含まれていない」と述ベたものである。
なお、同事業はまちづくりと一体となって行う性格のものであるため、河川整備計画(原案)において、「まちづくり構想や都市計画との調整を行うことが必要であり、関係者との調整状況を踏まえつつ順次事業を実施する。」としている。
また、御指摘の「高規格堤防の整備に要する全費用」については、具体的な施行の場所ごとのまちづくり構想等との調整状況、地盤改良の必要性等を踏まえることが必要であるため、算出することは困難である。