~日本希望製作所 姜乃榮(カンネヨン)研究員の報告~
姜研究員は、2004年に来日して日本希望製作所の設立に参画。以来、数多くの視察を担当してきました。
その経験をふまえて、視察のときには、お互いにいいとところも悪いところも見せあって交流を深めていくことの重要性、言語や文化を越えて交流するときには、言語のみならず、文化や考え方の違いをふまえて調整できるコーディネーターの役割の重要性などについて報告。以下は、報告の一部です。
日韓では、同じ言葉なのに意味が違う言葉がある。しかも完全に違うのでなく微妙な違い。全く違う言葉、概念なら人は一から理解しようとするが、似た言葉、概念だと、自分の思い込みもあり、逆に理解は難しくなる。日韓の交流に取り組んできて、日韓は似ているからこそ相互理解が難しい部分があり、お互いを少しでも知る人が間に入り、こうした微妙な違いを調整するとうまく交流できると感じている。
貧困層密集地域の再開発で住民が追い出されるという状況の中で、ドキュメンタリーを作ろうと地域に入ったことを契機に、地域の問題に興味を持つことになった。1997年のIMF危機では、日雇い労働者の多い地域の知り合いのほとんどが職業を失い、中には家庭が崩壊する者もおり、その人たちにできることはないかと相談センターでの相談対応、職の斡旋などの活動を地域で行った。そこで気づいたのは「人が大事」ということだった。人がいないと活動もできない。だから希望製作所の「希望を製作する」というのは人づくりだと考えてきた。
いろいろな視察や研修を主に担当し、いろんな人に出会った。日本のいろんな地域の方にも会うことになった。しかし、良い事例を見ても、その場では良いかもしれないが、時間がたったら忘れてしまう。良い事例なら、韓国にも結構いっぱいあるのだから、先進事例を見せるよりも、韓国からの訪問者にも、日本の受け入れ側にもお互いに刺激になることが大切ではないかと考えるようになった。視察参加者が何を求めているのかを考えた時、「本当に自分の活動が良い方向なのかを確認したい」のだと気付いた。良い面も悪い面もお互いに見せ、深いつながりが生まれる「感動がある視察、研修」を心がけてきた。
地域には環境、福祉、住民自治、まちづくりなどいろいろな問題がある。総合的に見ないと地域の問題を解決するのは難しい。視察希望は分野別であるが、個別ではなく、横断的に、立体的に行い、地域同士の交流を起すことができないかと考えている。日本の様々な地域の問題が「韓国からどう見えるか」「逆はどうか」と総合的に考える交流も必要だと思う。
視察の参加者は、当初、男性40~50代が多かったが、女性、若者、高齢者など年齢層が広がってきた。いろいろな階層が活発に活動していく傾向が、視察の参加者からも見える。現場レベルでの交流が広がってほしい。
韓国で「まちづくり」という言葉は日本から紹介された概念。建築の立場からの紹介だったため、都市計画がまちづくりだと広がっている。しかし、私は、日本の人たちが市民社会の現場で取り組む「まちづくり」は、「住民が自分たちでまちをつくっていくことだ」と韓国に伝えてきた。日韓の交流で、「これがまちづくりだ」というものを力強く伝えていきたい。
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