宇沢弘文先生のこと。

CIMG3732昨夜のNHKクローズアップ現代は「人間のための経済学」と題した宇沢弘文先生の特集だった。すべての人を幸福にする経済学をめざし、「行動する経済学者」「知の巨人」と評された宇沢先生。社会的共通資本と共同セクターの重要性を説く先生の教えには深く共感するとともに、わずかながらもそのお人柄に接する機会にも恵まれたことを本当に幸運なことであったと思っている。番組インタービューは2009年に撮られたもので赤いセーターにトレードマークの白髭が良く映えている。優しい語り口だが、相手の目を覗き込みながら話される先生の眼力は物凄い。行動する経済学者は神出鬼没、2009年当時、議員会館で開かれた年金問題集会や長妻昭衆議院議員の地元ビアパーティに一般参加者に交じって何食わぬ顔で参加しておられたお茶目な行動を懐かしく思い出した。何とも不思議な御縁だ。宇沢先生との初めての出会いは、今から40余年前、八王子の大学セミナーハウスで行われたICUの新入生セミナー(1972年)。残念ながら先生が何を話されたかは覚えていないが、経済学徒ではない私にもその姿は強く印象に残っている。気鋭の…経済学者は窮屈そうに長身をスチール椅子の上に折り、組まれた長い脚はジーンズにワークブーツ! 晩年の好々爺ぶりとは好対照なクールなかっこ良さだった。二度目ご縁は2006年、私も都議時代から取り組んだ八ッ場ダム問題。先生は計画に疑問を持ち反対する私たちの市民運動に理解を示して賛同人になってくださった。直接、集会などへのご出席は叶わなかったが、どれだけ元気を頂いたことだろう。私自身の活動にもご理解と励ましをいただき、07年の参議院選挙初挑戦の折には推薦人になって下さった。私の人生の中でも一番の宝物だ。お願いに伺った時の緊張感、心の底を見透かすような眼力は今でも忘れられない。そして、面談もそこそこに「ビールでも飲みに行きましょう」と誘ってくださり、楽しく興味深い話をいろいろ聞かせてくださった(民主党への期待も苦言も)。宇沢イズムをもっと党のカラーにしたかったと今でも思う。三度目は、「TPPを考える国民会議」の代表世話人にご就任いただいたこと。2011年2月21日の設立の記者会見には二つ返事でご出席くださった。社会的共通資本を破壊するTPPに対する先生の危機感と怒りを私たちが直接知る機会となった。TPP推進を意図する政府説明会は、3月11日の東日本大震災・福島原発事故の発生により沙汰止みとなったが、残念なことに先生は発災から10日後に倒れられ、長期の療養生活に入られたのだった。復帰した安倍政権は、公約違反にもTPP交渉加速の鞭を入れたが、当然ながら交渉の行きづまりは隠せない。秘密裏に進む交渉を差し止めようと、現在、TPP阻止の裁判闘争も提起され、宇沢先生は奥様を通じて活動支援の賛同人に協力するとのお申し出を頂いた矢先の先生のご逝去だった。残念でならない。人間らしい生活ができる、人間らしい働き方と経済をなんとしても実現したい。先生の蒔かれた種の一粒になれるように活動を進めたいと改めて心に誓った。

大河原 雅子さんの写真